……困ったわ、大きな音が出ちゃう
[クレーンと鎖で吊られた塊を下す以上、騒音は避けられない。
黙って出て行くつもりだったのにねと困り笑いを零しながら、ガラガラと言う鎖の音と共に船をおろす。
さて、見に来るような者は居たか。
声をかけられても作業を止める事は無く、船が水面に浮かんだ頃に、わたしはようやく顔を上げる。
周囲には港はおろか、島の1つすら見えない。
まだ何処にも付いていない海の真ん中に、自分は降り立つ。
そうして大きな船に向かって小さく手を振ると、ボートのエンジンを作動させる。
ぐんぐんと遠ざかって行く船を見つめながら、わたしは波風に髪を揺らす。
ケープとスカートの裾がたなびいて、そういえば海に来るのは初めてな事を思い出した。
勿論、監獄行きの輸送船は数に入れて居ないわ!]