―回想・夜雀亭にてフットマンと―
[生前の私の記憶にあるフットマンという人物は「やや粗暴だが話好きで気のいい人」だった。
未だ若い父ではあったが、その父を「あのガキ」呼ばわりできる人が何人いたか。フランクな間柄だったのだろうか、「あいつは孤児を攫う」とは父の評で、話を聞いてみるとどうやらよく行き場のない子供を拾って育てているらしい。
どうやら私も気に入られたみたいで、引き抜こうとしては父と両方の部下たちが止める。
そんなやりとりを何度も繰り返したことは、今思い返してもあまり悪い気分ではなかったように思える。
そんな力と人格を兼ね備えた彼が独立を望んだとき、多くの人が彼に付き従ったのも頷ける話だ。
何しろ比較対象があの祖父だ。別にちょっと怖いなんて思ってたりしないんだけどね。]