回想、昏く光る紅林檎
[ここに収監されてから数日が経った頃だろうか。
看守は自分の力を誇示する為か、それとも囚人達への気分転換なのか。度々囚人を犬に見立て、散歩と称して尊厳潰しを行う。
新入りの私は刑務時間の一部を看守の散歩に充てられていた。年端もない少女が連れ回されているのは、恣意行為として目を引きやすく、体のいい優越感の道具にされていたのだろう。
その様子を見たある者は加虐心を煽られ、口端を狐の形に吊り上げ不快な視線を隠そうともしないし、またある者は外の情報から、私が件の殺人鬼なのかと怪訝そうな表情を浮かべていたり様々。
そして、そんな囚人達を私は無感動に眺めて歩いていた。
害意を持って接する相手に警戒はすれども、好奇の目に晒される事自体に忌避感は無かったから。
だからこそ、そうではない視線と言葉に身体が反応したのかもしれない。
>>26]