[牢獄に響く鼻歌は、陰気になりがちな牢獄の中で不気味な程明るくて。>>25
光を宿さない瞳は、私には昏く光っているように見えた。
『あなたも誰かを愛してあげたの?』
問われた言葉の意味を、その時はちゃんと理解していなくて、私はただ聞こえた質問に何となく応えた。]
……愛した人は死んでしまったのよ。
私は、愛する人を奪った奴らが憎くてたまらないのよ。
もしも愛した事で、こんな所に連れて来られたなら、そんなの……認められないのよ。
[彼女と同じく、瞳から光を失いながら──抱く感情は全く違うままに──微笑み掛ける彼女を見据えたのだった。
その後、対話があったにせよ、その時はそれで看守の散歩は終わっただろう。
後日、風の噂で彼女が有名な連続殺人を犯した毒婦である事や、房の入れ替えが決定となった事を知るが、それはまた別の話。*]