余談は回想と共に
[あの日のルミへの耳打ち
>>297について、後日、あの交流スペースを監視していた看守のひとりから改造マグナムの銃口を胸に突き付けられて問い詰められた際、ハリコは涙目でこう答えていた。
相手がいきなり銃口を突き付けてくる手合いだったのは幸いだった。お陰で躊躇する演技をする必要もなく、すぐに“作り話”を吐くことができたのだから――それも本心からの恐怖と共に。]
か、か、……可愛かった、から、あの子、
ちょっと、口説いちゃって、たん、です……。
ご、ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい……。
[「実は女の人が好き」「こんな風紀を乱す行為」――なんていうセリフは必要なかった。
この看守、ハリコの言い分に一瞬きょとりとはしたものの、思いの他あっさりと納得した様子だったのだ。]
『そうなんだー。ふーん。
せいぜい頑張ってね? 夢の世界の子猫ちゃん』
[何を頑張れ、とは言われなかった――“よりにもよってあの女殺しの毒婦に”なんてお節介は、この看守は口にしなかった。
ハリコはただ、恋愛対象としてのハードルの高さ(性別とか、単純に個人としての相性とか、看守の目を掻い潜ってのあれやこれやとか)のことを言われたのだと、この時は考えていた。]