―女王様の赤い男―「【ヒート・H・フットマン】には、近づいてはいけない。」[ぼくが街へ行くようになってから、祖母に言われたこと。あまり個人やどこかの組織について話すことのない祖母が、珍しく言及した人物だった。いわく、彼はとても気まぐれで、わがままで、女王でさえ御しきれない男なのだと。だからぼくは、彼に会いに行った。祖母がそこまでいう男がどんなものか、見てみようと思った。まあ、その時は結局話しかけることはできず、遠くから不機嫌そうな横顔をちらりと盗み見るだけだったのだが。]