[それからすぐに顔色を「鬼」から「人」に戻し、声色も穏やかな調子に戻す。
フィジシャンは(案の定)悪びれた様子もなくニコニコと笑うだけだったので、その意味では別に顔や声を元に戻す必要はなかったが、万が一他者に「この女やらかしそうです」と通報されれば本当に今後の立場に響きかねない。]
……、お見苦しいものをお見せしました。
今のお話については、聞かなかったことにしますね。
そもそも私はもう、
カサブランカの職員ではありませんし。
[ここで「一回きりの犯行だったしそこまで重く見てない」「カサブランカ内でもネタ事件化する程度にはなっている」とまで口走らなかった程度には、リリオ時代のセキュリティ意識はまだ、この頃情報公開の挙動が目立つ自称アイドルの中でも生きているらしい。
ともあれ、差し入れは受け取って貰えたのだからそれで充分、と。
こうしてオクリビはその場から離れ、大型倉庫からも出て行った。]