― 回想/1年前・夏の終わり・九月/廊下 ―
[晴れやかな表情を浮かべる少女>>135と相反するように
対面する彼女>>257の顔は困惑に曇る。
すれ違った距離を生めるように美濃が歩を進めれば>>256、
元より大きな身長差がさらに広がっていった。
見上げる少女と、見下ろす彼女。>>255
両者の心境を表すような姿勢が対照的な演出を後押しする。]
これから渡しに行くんです。
[伸ばした指先を微かに震わせる丹田の演技は緻密で繊細だ。
言葉少なくとも、声音や表情が美濃の感情をつぶさに伝えてくる。
未熟な自分が怯みそうになるのを堪えて顔を上げ続けた。
この瞬間の結月は、絶対に美濃先輩から目を逸らさなかったから。
何を、とは言わなかったけれど、
向かい合う二人にはそれで十分だったのだろう。
美濃は、まるで引き留めるように言葉を続ける。>>257]