― かつて ―
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無論その時は、丁度お楽しみの時間であった。
今日のターゲットは20代前半の若い女。もう少し抵抗しても良い物を、あっけなく静かになった身体を引き寄せて、手元のケーブルを探る。
――この時、素直に大人しくなった事を疑問に思って居れば、その後の騒動は起きなかった。
甘い香水の香りがする柔らかな身体を向かい合わせに抱き寄せると、手早くケーブルを刺してデータを引き抜く。
簡単な仕事だ。その後は頭の中を乱暴に混ぜて行く。
相手の安価な脳内防壁をグシャグシャに潰し、記憶領域の枠組みを削り、人格データの蓋をこじ開ける。
そういう物を楽しみにしていたのだが――、
今しがた引き抜いたデータの最新地点に、妙な物を見つけた。
GPS情報は丁度自分が居る部屋と、少し離れた地点。
画像データ照合、一人はこの女。後は体格のいい男数名。]