[そんな訳で、長話の“拷問”で頭がボケっとしていたハリコは、不意にこう口にしていた。]
頭イカレたピエロ野郎がサーカスしてない。
[相手が男だとか、何の罪に問われたのか、「頭イカレた」が具体的に何を意味するのか――もはやそんなこともぶっ飛んだファーストコンタクトであった。
看守でないとはいえ男性の姿を目の当たりにしても、ここで身体が咄嗟に怯えに強張ることすらなかったのだから、余程あの長話の“拷問”は囚人におそろしい影響をあたえるものだったらしい!
……この反応の中に「どんな凶悪犯でも始末する復讐代行人」への恐怖が含まれていなかったのは、看守の無駄な長話の所為という訳ではなかったのだけれど。*]