― 下準備 ―
[そうして社会復帰の為と料理が許されれば、ルミ・ビリヴァーは刑務作業に勤しんだ。>>177
経験者と言う事もあってか、パン作りは滞りなく。
ネジの外れた問題児とは思えない模範囚のような働きぶりに、周囲はかなり驚いていたものの、何か騒動を起こす様子も無く。
むしろ他の囚人に丁寧なレクチャーを行うなどをした結果、パン作りに慣れる人数も多くなり、一度に焼けるパンの量も次第に増えて行った。
運び込む小麦粉の量も自然と多くなり、オーブンはフル回転。
監獄に居る全員にとまでは行かなかったが、位の高い看守と一部の特別な囚人に配給される位には行き渡ったか。
とは言え女が毒を振舞った罪が消える事は無い。
念の為、作業開始の数時間前には、厨房に看守の検査が入る決まりとなっていた。
退屈でしかない業務に、下っ端達は欠伸混じりで。]
[そのように何が起こる訳でも無く過ぎて行くだけの日々の中、
女は幾つかの種を蒔く。]