― 最後の仕上げ ―
[ウィレムと言う男が留守にする日の前日、厨房に大量の小麦粉が運び込まれた後の事。
女は調理器具の棚を1つひっくり返した。
金属の音が散らばって、久方ぶりに鞭が飛ぶ。
片付けと清掃は、罰として女1人に押し付けられた。
1人厨房に残されたルミ・ビリヴァーと言う名の女は、罰掃除を終えると積まれた小麦粉の袋を幾つか開封し、中身を零す。
床の上、雪のように積もったソレに満足し、最後の仕上げにポケットから灰皿を取り出すとテーブルの上に置いた。
パンを通貨に、他の囚人から流してもらった品だった。
その後は、どうせ明日点検が入るのだからと、その日の担当看守は中を良く確かめもせず、何時ものように厨房の鍵を閉めた。]