[逃走劇、チェイスの発生を想定していたが、相手はあっさりと捕まった。
路地裏で大量の荷物を抱え挙動不審にしていた相手へゆっくりと近づくと、襟首をひっつかみ、勢いと力任せに別の道へ引きずり込む。
大変ありがたいことに、他市民の興味は町中の巨大ディスプレイと、其処に映し出されるスピーチに向いている。それに誰も、路地裏で発生するケンカに首を突っ込みたがりはしないだろう。
袋小路のソコに、"難民ID48516"を引きずり込み、思いっきり投げ捨てる。
相手の抱いた荷物が地へ散らばった。
性別、男。
年齢、二十代後半。
身長体格、……平均。
此方にパワードスーツは無いが、生身のケンカなら勝てる相手だ。]
『ザ、
……"難民ID48516"だな』
[名ではなくID名で呼べば、自分がどのような状況に置かれているのかぐらいは理解出来たのだろう。
怯えの後、緊張、警戒態勢。こちらに向けられる感情が敵意へと変化していく。]