─梅雨・放送準備室─
[窓ガラスを叩く雨。
梅雨の季節は、普段はグラウンドを利用している野球部やテニス部といった運動部の練習が屋内に切り替わる。
体育館を順番に利用しているようだが、この季節だけは廊下をランニングなどに利用してよい事になっていた。
運動靴が廊下の床と擦れる音は耳馴染みがなくて新鮮でもある。
けれど窓の向こうから彼らの歓声が聞こえてこないのは、ほんの少し寂しい。
放送部内には、一種、弛緩した空気が広がっていた。
全国高校放送コンテストの県大会が終わった。
残念ながら決勝に上がる事が出来たのはアナウンス部門が一人だけ。
皆の期待を一身に背負った先輩も、全国大会に進む事は出来なかった。
とはいえ、これから一大イベントである体育祭や文化祭も控えているし、来年の全国高等学校総合文化祭の参加権がかかった選考や、新人大会などが残っているのだが。
>>318そんなところに、ノックの音が響いた。]