正門を越えた先・写真の話
ご、ごめんなさい
[少年は男性にそんな笑い方をさせたかったわけではなく、何の悪気もなく話を振ってしまった。
>>340だからこそ最初は慌てて謝っていたのだが──目を丸くし、まばたきを早い拍子で繰り返し、最後にははっと息を呑み。
申し訳なさそうに眉を下げた顔は、相手の話が進む毎に変化していく。]
……僕、写真のこと全然分かってなかったって気づきました
機械と人間の撮影の違いなんて考えもしてなかったかも
でも本当は、大切なものを形に残す凄い技術なんですね
写真家さんって、素敵なお仕事ですね
[脳が少しずつ忘れていくものをデータは半永久的に記録できる。でも、そこに魂が無いと少年は確かに気づいていた。
思い至るものが、写真家の話には確かにあった。
胸に届く言葉で語られたこの人の撮る写真を、少年は見てみたくなっていた。
奇妙な話の合致により勘違いは解消されぬまま、彼からマストへの好意的感情だけがより強くなる。]