[確かにその写真を見てみたくなっていたけれども。
まさかそう感じてから一番に撮られるのが自分になるとは、少年は全く予想していなかった。>>341]
僕、ですか?
い、いいのかなぁ。お金とか払わなくていいのかな……
[今さっき尊敬の念を覚えた技術者を前に少年は気恥ずかしさと躊躇を覚える。口元を手で覆って、おろおろと視線が流れた。
想像すれば大金が降ってくるのかもしれないが、そんな形で出したお金には相手に報いる程の価値は無いだろうとは子供でも想像がつく話。
やがて──結局関心が全てを上回ったのか、迷った末に頷いて、「お願いします」と頭を下げた。
それから早速となれば、正門の前に立ち両手は身体の脇に下ろし、レンズを見つめはにかんだ。
持って帰れるのかは知らない。許されるかも分からない。
この時マストが向けてくれた厚意が、少年の思い出となったことだけが確か。*]