[ケンはやや実直に過ぎる。共に過ごしたわずかな時間で、自分にも他人にも嘘や誤魔化しをしないという印象が強いほどには。
こんなことを言ってはなんだが、高校生は同調する生き物だ。
好きなものをものを嫌いという経験も、その逆もままあることだろう。
それを理解しない、その輪の中に入らないケンは、多くの人にとって付き合い難い存在だろうと想像がつく。
実際飯島も、ケンのこういう側面で感情を揺さぶられているのだ。ほんのわずかなやり取りで。
それに加えて、容姿からして威圧的に感じるものなら。それに説得力のある噂がつきまとうのなら。
関わり合いになりたくない人間が一定数存在するのも納得がいくものだと思えた。
彼はそれでもいいのかもしれない。でも、でも…
飯島は暫し悩む。なんと言葉を返すべきか。
考えて、考えて。迷った末にとりあえず一言、ぽつりと零す。]