[さてこの抗争当時、シンギュラリティ施設内で「完成」途中だった機械化人類たちの意識元の中に、「レイ」という名の人間がいた。
当時15歳。表社会で暮らす、移民ルーツの市民のひとり。
身寄りは父親一人。その父親も、抗争終結から程なくして失踪。
表向きには「裏通りに迷い込んで事故死した」という扱い。
加えて出生時の記録には「男性」と記載されている――つまり、身体的には男性と見做されていた。
故に、抗争の内情や電脳化技術について知らない者なら、レイがあのリリオ・カサ・ブランカに引き取られていたとはまず考えないだろう。
たとえその「少年」が、常日頃から女性の装いと言葉遣いの、魂が少女である者であっても。
……このレイこそが、後に「フアナ」と名付けられ、今は「オクリビ」と名乗る女だ。**]