シンパシー対シンパシー
[フィアと名乗る少女と最初に会ったのは、医務室。
>>330 昏い目をした女の子だな、と思った。
路上を彷徨っていた頃、よく見たのと同じだった。
そこでは親に酒瓶で殴られて、スリップ姿で戸の前に立たされている子が幾らでもいたものだ。]
(でも、それよりはずっときれいだ)
[綺麗な服、整えられた髪。
そしてそれらを台無しにする無骨な口輪。]
“……あなたも苦労してるのよ?”
[そう、話し掛けられて初めて目が合った。]
……お互い大変だよな、それだけは分かるよ。
[気の利いた言葉を紡ぐ努力は、うまく実らず。
黙って、中庭からの風に揺れるカーテンを眺めた。]*