ありがとう、ふたりとも。
[柔らかな声でハリコがそう感謝を告げた相手は、アレッキーノの慈しみの笑みに包まれた二匹のクマ。
「妻と娘の代わりのように」という言葉から、ハリコの目もまた、この“ふたり”を母グマと娘グマとしてみていたのだ。
それから、ピエロの化粧を施した顔に再び視線を戻し]
……あなたが何の罪でここに来たのかは知らないけれど。
こうして出会えて、大切な奥さんと娘さんの話を伝えて貰えて、本当に良かった。
あなたも、ありがとう、ミスター・アレッキーノ。
[ハリコは偽りなく笑んでこう伝えていた。
それからは(多分まだ清掃作業の刑務が続いていると思しき)アレッキーノを見送る心算で――一言だけ、格子越しにくちびるを寄せて囁く。]