[背の高い、トループを見渡せる廃墟のてっぺん。
GPS付きの首輪を付けながら、壊れた眼鏡型端末をセロテープで補強する。
良い仕事にしよう、とっておきの良い仕事にしよう。
わたしにとって、彼らの語る「秩序」の話はどうでもよかった。他組織との諍いも、抗争の行先自体に興味は無かった。
唯の「夜の女王のアリア」との利益関係。壊したい者と壊したい者が偶々揃っただけ。
無造作に、それでも複数と所持していた情報の下、主要メンバーの潜伏場所に手を伸ばす。
無差別に他者を襲って居た事もあってか、所持する情報の幅は大変広いもので。浅いソレらではあったものの、調べ物のフックとしては十分すぎた。
まずはひとり、それからふたりめ。
丁寧に情報を整理し、入念に壊して、次に移る。
作業の回転は随分速く、一晩に何人もの死体が転がったが、その混乱に乗じて更に組織内端末のサーバーを漁り、わざと保守システムに噛みつかれたままバックドアを設置。足跡も消さぬまま乱暴に出入りする。
無論「シンギュラリティ」側は早々と異常事態に気付いたものの、此方が単独と言う事もあり、中々尻尾を掴めずにいた。
なぜならば相応の規模の「組織」が最初に疑うのは、わたしのような有象無象の個人ではなく、「他組織」であるのだから。]