[大人に近づくにつれて、少女である自分の身体は
けれども男性のそれに確実に近づいていく。
背は伸びていき、高かった声も、出にくくなっていく。
人によっては耐え難い苦痛となり得るこの変化は、
それでもレイにとっては、そこまで苦しくはなかった。
女の子らしい服を着られれば、それでわりと十分で。
こう思えたのは、ひとりでレイを育てた父をはじめ、
周囲からも、「女性」の自分をそれなりにでも
受け入れて貰っていたからだったかもしれない。
だから父に「あのメトロポリスに移住したい」などと
レイが訴えることは特になかった。
道すがら声を掛けてきた、妙に端正な人型の誰かの
「メトロポリスに行かなくても理想の身体が手に入る」
なんて勧誘にも、特に振り向くことはなかった、のに。]