─舞台裏/梅雨・放送準備室 NGシーン─
[同級生の女子と話すシーンでそれは起きた。
後輩の手本にならなければという使命感と、話慣れていない女子生徒と喋っているとあって、少年の不器用さを切り取るシーンだ。]
へっ?
[思わずと言った様子で竹村の方を見た少年は、思った以上に距離が縮んでいた事に気付き、勢いよく──]
っ、う……。
[後退り過ぎて、CDの並んだ棚に右肩をぶつけた。
僅かに漏れる声。
CDケースが幾つか床に落ちる。
醜態を晒した羞恥ではない理由で、肩が震える。]
い…っ、いや、そ、そんな事ないです……。
僕が女子と話すの、慣れてない、だけで……。
[痛みを堪えて芝居を続行しようとしたものの、海藤では有り得ない関西訛りのイントネーションにカットがかかった。]