― 六月/幸阪家 ―
[誰かが言い争うような声が聞こえる。
両者ともにヒートアップしているのか、
耳障りの悪い甲高い声が音量を上げていった。]
わたしだって頑張ってるもん!!!
[子どものような悲鳴をあげたのは結月だ。
彼女は僅かに息を切らせながら、目の前の女性を睨みつけている。
スーツまでは行かずともきっちりとした服装のその人は、
その見た目から生真面目さが覗いていた。
母親なのだろう。額に手を当てながら大きなため息を吐く。]
「じゃあ、どうしてこんな点数しかとれないの?」
[ぐ、と結月は奥歯を噛み締める。
テーブルの上に乗ったテストに赤点は存在しない。
しかし教科によってばらつきはあるが、半分を切るものもあった。]