[さて、今度はこちらの番。
蜃気楼に向かって真っすぐに。勢いをつけてその拳を振るえば、避けるでも受けるでもなく受け流す――当たった拳に手ごたえは薄く、つまりは横に力を逸らされたようで。
しかしゼロではないその手ごたえに連撃を繋ぐが、二撃目は完全に受け流されてしまい、今度は手ごたえが無かった。
ところで、受け流された腕ははたしてどこへ行くのか?
それは勿論、目標の向こう側へ。拳の勢いのまま接近する亡霊と少女、背後に回られれば後は無防備な体がそこにあるばかりで。
胴体と肩の関節部を掴むべく手を伸ばす亡霊。憐れにも少女の腕が胴と分かれてしまう。]
──なんて事にはならないのだけど。
腕ばかり見て、背後がお留守よ?
[腕の勢いを利用して跳ね、亡霊の頭部へ踵を打つ。わかっていた事ではあるが、機械の装甲のため相応に硬く、やや苦い顔をする少女。
しかしどうやら不意を突いたのか亡霊はバランスを崩し、その場に倒れた。
難を逃れつつ得た好機、だが追撃をするには姿勢が悪い。
視線をやれば、間もなく姿勢を取り直そうとする亡霊の姿。
間に合わずとも不利にはなるまい、そう思い拳を向ければ──]