― 六月/体育祭 ―[耳元でびゅうびゅうと音がする。全身が心臓になってしまったようだった。肺が熱い。それでも結月は足の動きを止めなかった。指先に力を込め、地を蹴る。その繰り返し。体育祭を見事に進行してみせた放送部>>346の声も、今は走り抜ける傍から後ろへ流れていく。同学年の女子たちをやや後ろに、他学年はどうだったか。生徒の保護者より優秀なカメラマンが勇姿を逃すことなく捉える。]