[結局、ヘロンという人間は、“人ならぬもの”の側にさいごまで立ち続けるという未来を自ら捨てた。
“人”でありながら“狼”の側に与し、“狼”の生を繋ぐために己が身まで捧げられる者とは異なっていたのだ。
それは確かに、自らの肉親の生を想うが故であり。
同時に、己が意志ではどうしようもない特性に付け込まれた結果でもあったのだけれど――。
この人間に「もう迷ってもいない」とまで言わせたものは、さて、なんだったのか。>>14
愛らしい誘惑に満ちたショッピングの石畳にも、
魔法といたずらと温かさに満ちた妖精の叢にも、
密林に鳥獣の声が遠く響く冒険の大地にも、
あの妖精の靴音は響いてはこない。――まだ。**]