――興味深いな、
なるほど、それで検体に
[データの海を泳ぎながら独り言を落とす。
現在確認されているあらゆる症候群とも不一致。
性器形成手術は済んでいるのか?なんと、記録上は――済んでいる!
その過程で邪魔な脳は外したのであろう。性自認をするような思考は、手術の結果と一切関係無い所かむしろ邪魔だ。少々機械パーツが混ざってしまって居るものの、情報を読み込んだ限り殆ど生身であると推測される。
現在「レイ・カノコ」の身体は男性から女性となり、検体とも遺体とも区別がつかない状態にある。
ではその後は?何処へ運ばれた?当時あり得たルートを全て洗い出し、確信へと手を伸ばす。
あの掃討の際、トループには既に居なかったのか?
浮上したのは探索の手が及ばなかった、トループ内にある当時の「シンギュラリティ」地下施設。
「レイ・カノコ」の為だけに設えられたオーダーメイド。機材に至ってはフルスクラッチ。
完全に、彼女の手術及び術後の経過を見る為だけに設置された、たった1つの部屋。
カルテの詳細を手繰らなければこんな物は見つけられなかっただろう。自分と夜の女王の目を掻い潜って!こんな物が残って居たなんて!
さて、その部屋はまだ、きちんと存在するのか否か。
25年と言う歳月の中、「レイ・カノコ」の肉体は滅びてやしないだろうか。]