[だから、多少なりとも目の前の人物を羨む気持ちはある。人種も性別も財産も。何も気にせず手を差し伸べられたなら。すくうために生まれ持った両腕だと、そう教わって育ったから。]…………少しだけだぞ。当然、誰にも言うなよ。[小さく息を吐くと、そう言って、彼女の隣に膝をつく。何も持ってきていない、といえば彼女は自身の道具を貸してくれたりしただろうか。左目でギュルギュルと忙しなく周囲を確認しながら、右目は気絶しているヴァルハラ兵を見て、きゅ、きゅ、と不自然な瞳孔の収縮を繰り返す。]