路地裏:古物屋にて
[古ぼけた扉をそっと開くと、たしかべる?とかいう楽器の音と共に、どうにも古臭い品々が私を出迎えた。
歯車仕掛けの動かない懐中時計に、何に使うのかもわからない電動機(円盤に針を刺して何をするんだろう?)など……用途がわかるのは時計だけね。
店に入り、服に隠した機械腕をおもむろに取り出すと、底を盛った靴に違和感を持たれぬよう大げさに音を立てて扉を閉める。
カウンターに座る老婆は、顔を隠し片腕がゴツい義手、といういかにもな格好の来客にも関わらず、楽しそうに笑って私に声をかけてきた。]
『おや、これは珍しいお客様だ。もしや夜の女王んトコの放浪娘かい?』
──ええそうよ。私を知ってるの?
[想定と違う声掛けに一瞬戸惑うが、すぐに平静を取り戻す。聞いた話では老婆の一言目は定型句だったはずで、正体バレも相まって無いはずの心臓が跳ねたような気分だった。もっとも、ネタばらしはすぐに行われたのだが。]
『有名だからね。特にその腕は』
そう。それでおばあ様、わたしお店のためにお買い物に来たのだけれど?
『ひひ、普通なら可愛らしい言葉のはずだが、お嬢ちゃんの場合はどうも違うようだ。いいだろう――だが。
「
ウチは古物専門の店だ。お嬢ちゃんはこんな所で一体何をお求めだい?」』