[こんなに長い時を越えて、奪われた“私”の身体に再び辿り着いたのに。
「再会」らしい涙のひとつも溢れなくて、
胸や腹の底から声がこみ上げてくることもなくて――。
それでも一言“私”に伝えたいと、電子の脳は意思した。]
今までよく、頑張ったわ、“私”。
[意識どころか脳すらない、ただの空っぽの器。
それでも生体反応を未だ示すその肉体に対し、かつて宿っていた意識は、機工の顔を笑みに象り柔らかな声を掛けていた。
このオクリビの行動から、彼女がメモに「彼」と記したこの「女性」の肉体こそ、彼女の意識の移植元であることが分かるだろう。]