( 元気にステージに立つことだって、できる。
ぴったりした衣装だって、ちゃんと似合う。
声も、「人間」らしく出せる。
……高い声も、ちゃんと出せる、かしら。 )
[「女性」の心と「女性」の性染色体、「男性」らしいからだの外形。
そのグラデーションも含めて「私は私」。
「レイ・カノコ」として生きていたオクリビがそう思考できたのは、父親も含めた周囲の接し方によるところが大きいのだろう。
ただそれでも、ステージ上で踊りながら高らかな声を奏でる「歌うたう偶像」>>0:387への憧れを抱いた時に、己の身体について何も思わなかった訳ではなかった。
そんなあの頃の、「少年」のかたちをした少女の記憶が、テキストの形で思考上に過り――]