[一瞬で終わらせてやるといったくせ、
少々間があった>>287
自分の血が口に合うのなら常食にしても
良いし、精気を吸われても問題はない身だ。
どう転んでも構わない。
この期に及んで躊躇うのならけしかけようと、
口を開いた瞬間>>288]
ッ、ふ ……っ、………く、
[無防備な声が零れて、唇を噛む。
鋭い牙が、皮膚の薄い鎖骨に喰い込む感触。
ヴァンパイアのキスに伴うと聞く陶酔は訪れず、
鮮烈な痛みが刻まれる。
痛覚を自ら断てる術を持つということは、
日頃痛みに縁が遠いということでもある。
ルーリが齎す慣れない刺激に、
喉奥で声を殺した。]