[背後で蝋燭に火が灯ったようで、蝋の溶ける香りがした。器用なものだ。穏やかに話しながら、少し空けられた距離を詰めて。]
……大丈夫ですよ。
誰かに言ったりしません。
血が欲しいならこれまで通り差し上げます。
何も変わらず暮らせますよ。
[ベッドの木製の柱に手を突いてにじり寄る。火傷の頬を真竜の口元へ。]
ね……これ、治してください。
[泰然として、けれどきっぱりと言った。
もちろん恐怖はゼロではない。本能的な危機を感じる。けれど、絶対に逃がしたくない。
知識欲と情。そしてもうひとつは彼の力を利用すれば素晴らしい薬が作れるだろうという、謀。
叶えたいことがある。いまや憎からず想う彼の、その寂しさに付け込んででも。]