[不意にファーストネームで呼ばれていることに気付き、もう一度笑った。彼も此方に似たような情を抱いているのならそれは重畳なことだ。]
……いいじゃないですか。
貴方のつけた傷なんですし……
[彼の問いにはまた、直接答えずに。
傷に唾液を刷り込まれると、まだ薬の抜けない身体はまず痛みを感じ、それから甘く震えた。
きっとゆっくりと、火傷は癒やされていくことだろう…………なんか長いな……]
……あの、ウロボロス。
たぶん、もう大丈夫なんじゃないかと……
もういいですよ。
[ベッドの柱に突いていた手を離し、おそらくもう距離を取ろうとはしないであろう真竜の肩に置いて。今度はこちらが距離を取ろうとする。
血でも熱でも甘さでも、お互いに同じものを求めて与えあっていたなら、それは利害の一致した関係でしかないはずだ。
そうでしょう?]