>>25
[その後は人間と変わりはなかっただろう。魔のモノである事を微塵にも感じさせない。人と人との自然な営みで、生を実感させただろう。
しばらく情を交わした後に男が達すれば、微笑みを浮かべる。]
お前の精は確かに頂いたぞ。
此れがまた新たな幸福を生む。
お前が人間に幸せを与えると言っても過言ではない。
[顔を寄せ、耳元でそう囁く。はたしてその声が男に届いているのか…どちらでも構わない。
そして、男の胸元に手を遣り。ゆっくりと首元まで這わせる。それから、その唇に短い口吻を与える。]
…お前にも幸福を授けよう。
[呟き、次の瞬間には波間が朱く染まる。男の首から噴き出したそれで。
そして、愛おしむような眼差しを向け、男の首からそっと自身の手を離し、朱く濡れた鋭い爪先をペロリと舐める。]
お前が望んだ幸福を…享受すれば良い。
それが終われば……自然に還してやろう。
[男の様子がどうあれ、その身を横たえ男を抱き締める。その生命の灯火が消えるまで。赤と青の明暗の光に包まれて、時が満ちるのをただただ待っただろう──。*]