[……悪くは、なかったと思う。記憶がすべてあるのか若干の不安はあるが、"幸阪結月"として偽りなくありのままで話せた。舞台は撮り直しのない一発勝負だ。端役だとしてもそれは変わらない。だから、今の根岸の精いっぱいは出したつもりだ。後の判断は監督に委ねられる。弾む心臓を宥めるように胸に手を当てた。それでも、もし丹田と目があったなら。にっこりと笑って見せるだろう。]*