[竹村茜はそれでも、夢を諦めたわけではなかった。
けれど夢だけを追うには力が足りないことを、今回のことで思い知ったのだ。
両親は彼女の夢を全面的に否定したりはしない。
けれど、夢を追うならばと一つ課題を出した。
"何かしら一つ国家資格を得ること。"
もし夢破れたときに、仕事を得ることができるように。
夢を追うだけでは現実に抗えない。
現実が壁として立ちはだかった時のことを考えての親心だった。
だから竹村茜は言語聴覚士の資格を得る道を選んだのだ。
もし夢破れたなら、誰かの為になる仕事がしたい。
それでいて、滑舌や発音などを科学的に理解し、自分の歌いたい歌を歌う為の道筋にもしたかったからだ。
竹村茜の心はまだ死んではいない。
寧ろ、折れた心を火種にして、新たに燃え上がっていたのだ。
[「─玉響に“なけ”─」一部抜粋]*