―映画の終わり・打ち上げ会場―
[行平と話は盛り上がり、シャンパンもおかわりを飲み終わったころ。
そろそろ行平を拘束し続けるのは良くない、と何となく自然に話を切り上げる。
そこで目に入ったのは、市街地の眺望を眺める烏藤の姿だった。
さっきの挨拶を聞くまで、全く彼が地元出身者だということを知らなかった。
映画の中でも海藤と鬼束が同じシーンにいることはほとんどなく、彼を遠くから眺めることはあっても、挨拶程度で話すことはなかったのだ。
…確か、映画のBD特典には彼が作詞、Nix作曲の曲が、そして歌い手もなんとNix版と海藤版の2種類が入っていると聞いた。
Nixもそうだが歌も演技もこなしてしまう烏藤もさすが住む世界が違う人間だ…と怖気づいてしまう。
しかし、シャンパンが2杯入り、行平と楽しい時間を過ごした今、もうこんなふうに集まることもないであろうこの機会に、できれば多くの人と色んな事を話してみたかった。
年下だぞ、行ける、と自分を鼓舞しつつ、話しかける。]