3 ― 星見る手紙 ―
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【秘】 青年 シャト > 星の停滞 ステラ
[コバルトブルーの封筒に白いインクで宛先と差出人が記されている。
中の便箋は植物を模した幾何学模様が縁取りのようにあしらわれている。
封蝋はアルカディアの暖かい時季に咲く花を模したものだ。
手紙と共に、小包が届く。中にはシャトの書いたファンタジー小説や短編集が三冊入っている。]
【秘】 青年 シャト > 星の停滞 ステラ
親愛なる友人 ステラへ
手紙を送ってくれてありがとう。君からの手紙が届いたとき、僕は本当に嬉しかった。
自分から手紙を送るのをやめたとき、どこかで、もう手紙はこないんじゃないかと思っていたみたいだ。だから君が手紙を送ってきてくれたことが、本当に嬉しかった。
君が知りたいと伝えてくれた僕の近況だけど、その前に、僕から手紙を出さなくなった理由について書いておこうと思う。
あの頃、僕は周囲からの評価に縛られて、自分が何を書きたいのか分からなくなっていた。
何を書いても納得できなくて、気分転換に自分の好きな本を読んでも、その本が本当に好きなのか自信がなくなって、どんどん気分が落ち込んでいった。
そのうち、何かを書くことも、本を読むことも辛くなって、どちらもやめた。
でも、そんな自分が情けなくて、認めたくなくて、僕の本を好きだと言ってくれたステラには知られたくなくて。
だから、僕から手紙を出すことをやめたんだ。弱くて、臆病でごめん。
【秘】 青年 シャト > 星の停滞 ステラ
近況だけど、そんなだから元気かと聞かれたら、あまり元気じゃない。
でも、君からの手紙が届いたとき、最初に書いたように凄く嬉しくて、今は少しだけ元気になったよ。ありがとう。
【秘】 青年 シャト > 星の停滞 ステラ
君の手紙を読んで、僕は久しぶりに自分の本を読み返してみた。
そのお陰で、ずっと分からなくなっていた自分というものの輪郭を、ちょっとだけ思い出せたような気がする。
君と会ったときのこと、君と色んな話をしたこと、楽しかったときの気持ちも少し思い出した。
封蝋、君と会ったときに咲いていた花を選んだんだ。君は覚えているかな？
アルカディアはまだ寒くて、本物は咲いてないから送れなかったけど、暖かくなったら押し花にして同封しようと思う。
ただの押し花じゃなくて、君がくれたように栞にするのもいいかもしれない。
なんだか、暖かくなるのが待ち遠しい。
今なら創作に触れても大丈夫そうな気がするから、何か書いてみようかと思う。
君からもらった栞も大切にするよ。きっと本を読むのが楽しくなる。
【秘】 青年 シャト > 星の停滞 ステラ
長々と書き連ねたけど、一旦ここまで。
また君に手紙を書くよ。
君の書いた物語や君の近況も気になるけど、教えてくれたりするかな。
君からもらった手紙、少し文字が震えていたのが気になったんだ。
君がよければ、話を聞かせてほしい。
最後に、アルカディアでも雪雲が晴れて、星が見えるときが多くなった。
僕の目に映る無数の星の中に君がいるなら、君の今いる場所からも僕が見えるかもしれない。
そう思うと、僕は寂しくなくなる。
君のいる星の柔らかな光が、暗闇を照らしてくれるから。
僕の友人でいてくれてありがとう。
一緒に送った本、君が喜んでくれたら嬉しい。
シャトより。
【秘】 青年 シャト > 演者 シェルタン
[橙色の封筒に白い便箋に黒いインクで本文が書かれた手紙が貴方のもとへ届く。鳥を模した封蝋が押されている。
宛先は惑星FO7402-1938 文学資料館、フルト様へと書かれている。]
【秘】 青年 シャト > 演者 シェルタン
僕の大切な恩人へ
お久しぶりです。この手紙は無事に届いているでしょうか？
僕は貴方から舞台を通して、夢や物語の素晴らしさを、希望を持つことの大切さを教わりました。
貴方の舞台を観て、衝動的に書いた手紙が少しでも貴方の力になったのなら、少し恥ずかしさもありますが、とても嬉しく、誇りに思います。
さて、貴方の行方が分からなくなったことについて、僕の周囲では亡くなったのではないかと囁かれていました。
その噂を聞いて心配していたのは事実だったので、手紙が届いて、貴方が無事に生きていると知って安心しました。
手紙に書かれていたお願い事は守ると約束します。
僕に様々なものをくれた貴方は、僕にとって本当に大切な人です。僕にとっては生きていてくれたことが、何より朗報でした。
どうか貴方が、これまでと同じように無事に日々を過ごせることを祈っています。
いつか貴方が自由に過ごせる日が訪れたら、貴方が手紙に書いてくれたように、貴方の舞台を観に行って、直接感想を伝えたいです。いつになるかは分からないけど、その日を楽しみにしています。
シャトより。
【秘】 青年 シャト > 旅行者 パウゼ
[大きめの白い封筒に、白い便箋。花の咲いた樹木を象った封蝋が押されている。中に暖かそうな手袋が同封されている。]
【秘】 青年 シャト > 旅行者 パウゼ
パウゼさんへ。
こんにちは。僕はアルカディアに住むシャトといいます。
もしかしたら、聞き覚えがある名前ではないでしょうか？
覚えがなかったらごめんなさい。僕も貴方と似た経験をしたことがあるので、相手を勘違いしているかもしれません。同じような思い出を持つ人間もいるんだな、と思ってもらえれば幸いです。
【秘】 青年 シャト > 旅行者 パウゼ
さて、貴方から知りたいと云ってくれていたアルカディアの近況ですが、現地住民の目で探り探り、思ったことを書き連ねた文章になること、ご容赦下さい。
まずは貴方の手紙で言及されていたように雪が積もることは、最近では少なくなってきました。
とはいえ、暖かいというわけではなく、身を切るような寒風が吹く日がまだしばらくは続くでしょう。外に出るためには防寒が必須なのは変わりません。
雪が少なくなって、陽が射すことが増えたせいか、花をちらほら見るようにもなりました。地面に貼りつくように生えている背丈のない花は、風が吹いても散らされないのが逞しいです。
アルカディアの人々に関しては、特に変わりないように感じています。
相変わらず閉鎖的で、でも外の人たちのもたらすものには興味を感じていて、何かしらで接点を持ちたいと思っている。皆そんな感じではないでしょうか。
【秘】 青年 シャト > 旅行者 パウゼ
僕が書ける近況はこれくらいです。また何か気になることがあったらお手紙を下さい。返事をします。
僕からも気づいたことがあったらお手紙を送るかもしれませんが、そのときには貴方は退院しているかもしれないので、よければ連絡先を教えていただけると嬉しいです。
最後に、貴方が手紙に書いてくれていた実を同封しようかとも思ったのですが、圧力がかかると発熱する性質のせいで発火したら大変なので、今回は同封を見送りました。
代わりといってはおかしいですが、手袋を一緒に送らせていただきます。
アルカディアのような寒い星に、また貴方が訪れるとき、役に立ちますように。
シャトより。
【秘】 青年 シャト > 次期当主 レグルス
[白色の封筒に便箋。宛先は惑星アッサの座標のみ。赤い封蝋にはアルカディアに原生する植物を模した刻印がされている。
その手紙が誰かに届くのか、届かないのかは分からない。]
【秘】 青年 シャト > 次期当主 レグルス
こんにちは。この手紙は、ちゃんと惑星アッサに、そこに住む人に届くでしょうか？
もし誰かに届いているのなら、そしてこの手紙を読んでくれているなら、とても嬉しく思います。
僕はアルカディアで生まれ、統一された価値観、統一された文化の中で育ってきました。
様々な人が集い、異星間の文化交流地となっているアッサにずっと憧れを抱いて、今まで生きてきました。
勿論、現地の人たちにも大変なことや苦労もあるでしょう。それでも僕は、様々な価値観が存在するからこその支えあいや理解が尊いものだと感じるのです。
いつか訪れてみたいと、度々考えてきましたし、近い内に僕はその考えを実現して、星の駅まで旅をしてみたいと思います。
その前に現地の人が、アッサをどう思っているのか知りたくて、お手紙を差し上げました。
貴方の思うアッサとはどういう星ですか？
もしよければ、教えていただけると嬉しいです。
シャトより。
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