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翌朝、 上官 アドニス の死が告げられた──……。
夜が明け、村人達は互いの安否を確認する。
どこからか上がる悲鳴。
村人の一人が、凄惨な赤い跡を震える指で示した。
噂は真実だったのだろうか。隣人の顔すら歪んで見える。
猜疑心に苛まれた村人たちは、怪しい人物を排除する事にしたのだった――…。
現在所在が確認できるのは 社長 ツァリーヌ、 望郷 グリーディア、 一人旅 レット、 籠の鳥 ドルチェ、 かたわれ リーン、 小説家 サンシア、 曇硝子 スイッセス、 有象無象 シャム、 渡航者 カラント、 さすらいのライダー アーネスト、 夢想家 コラーダ の 11 名。
…家族とは
仲、とてもよかったです。
[わたしは過去形で言いました。過去形なことに触れられたのなら「今はこうしてひとりですけど」と手を広げて見せたでしょう。同行者はいません。
そうしてバターの話になり、空の話になりました。それからステレオタイプの話になりました。たくさんの話をするうちに、クッキーはほどよい温度になりました。]
……そうですね。皆が。そう思ってくれたらいいのですけど。
[>>30誰かの言ったことを気にしないのは、強さではない、と彼が言ってくれたので、わたしは少し心が落ち着きます。
…人の言うことを、気にする性格になってしまったのは、そうですね。第三者の声に晒されて生きてきたから。だからそう、だれかが「そう言った」ことは、わたしの気持ちに多少なりと影響し続けています。…今も。]
…地球の人は、…いえ。わたしの住んでいる国や街の人、だったのかもしれませんが、そういうタイプの人が多かったように思います。
それこそ大衆的な地球人のステレオタイプというのがあって、それに固執しながら何千年もひとつの星の上で閉鎖的に暮らしてきたから、なのでしょうか。
…ホワイト・マーブルでは、たくさんの星のひとがあつまるのですから、もう少し、暮らしやすいところだといいなあ、って。
わたしにとっても、…コラーダさんにとっても。
……いい旅に、なるといいですね。
[そういってもうひと口、クッキーを貰いましょうか。 *]
─昨日・庭園にて─
[彼のちいさな友人に気付かなかったのは幸いだったのかもしれません。>>60 気づいていたら小さく声を上げてしまったように思いますから。
でも結果的に彼が目を覚ましたのは変わらなかったようで、目が合えば会釈をしました。ちらりと見ていたことがバレてしまったようで恥ずかしく、右や左に目を泳がせてから、取り繕うように笑います。]
…あ、はい、そうですね。
…ここにいると、宇宙空間にいるというのが嘘みたい。ほんと、…えと、そんな感じでお昼寝するのにも、すごくいい風景で。
[目が一度ビールの缶の上を滑ります。酔っ払いだとかは全然思ってないのですが、自分がビールを飲まない故に、「ビールを飲むのにちょうどいい景色」なのかどうかはわからなかったのです。]
…ときどきお見かけしてました。
よく本を読まれていらっしゃいますよね。
[わたしもよく本を読みます。でもわたしは知りません、この船に、好きな小説家さんが乗っていることを。目の前の相手が読んでいる「冒険」の本は、誰が書いたものだったでしょうか]
…ホワイト・マーブルにはあるのかな、紙の本。
図書館、図書室、本屋さん。
もうあんまりなくなっちゃいましたが、紙で読むのも、やっぱり好きなんです。
[もしも相手もそうだと分かれば、同じですねと目を輝かせたかもしれないけれど]
…でも引っ越しにあたって、コレしか持ってきてなくて。
[手元にあるのは子供向けの絵本。残る本は、地元の図書館に寄贈してきてしまいました。
だからもし、ホワイト・マーブルで新たな書棚を作るなら、これが最初の一冊になるんです。わたしはそう言いながら笑うでしょうか。 **]
─最終日─
[最終日も変わらぬ一日を過ごします。
朝起きて、ご飯を食べて。本を読んで。お昼を取って。
それからふらりとお店などを見て回ります。
お土産を買う相手もいなければ、旅の荷物を増やすつもりもないのですが、そうですね、今まで余り見て回らなかった、というのもあって、最後の機会でしたから。
ふと小物屋の店先で足を止めて、わたしはお土産品に目を奪われました。
淡いブルーのハンカチに、白い花の刺繍が施されています。ひとつひとつ人間の手で縫ったものなんですよと店主は教えてくれました。
…いえ、わたしが見ているのはハンカチの精巧さとか、人間の手を介した珍しさではないのです。
それは白くて小さい花でした。わたしはその花の名前をよく知っています。
………………ジャスミン。わたしが遺してきた、わたしの、名前。>>0:37 **]
─現在、土産店─
[ついうっかりハンカチに見入ってしまっていたため、お返事はワンテンポ遅れてしまったでしょうか
何度かお見かけした方です。>>118 こちらも自分から相手に話しかけることはあまりないので、お話したことはなかったと思います。]
……あっ、はい、いえ、
[と、返事は曖昧なもので]
あ、いえ、違うんです、何か探しているわけではないんですけど。…素敵なハンカチがあったものだから。
ジャスミンの花、好きなんです。
[取り繕って笑って、それを相手に見せましょうか。まるで地球の空を想わせる淡い青。白くて小さな花々がワンポイントで刺繍されています。
店先の商品には、優しい風合いの色とりどりのハンカチに、さまざまな刺繍が施されていました]
…ご家族。…ホワイト・マーブルにお住いなのですか?
[奥様だろうか、お子様だろうか、年老いたお母様だろうか。それともお孫さん? ご兄弟? 頭の中ではたくさん考えていますが、口には出しません。
そもそも彼がホワイト・マーブルに行く目的も同じとは限りませんから。そんなふうな聞き方になったでしょう。
家族、と言う言葉にすこし思うところはあれど、わたしはきっと穏やかに微笑んで尋ねています。*]
…お優しいんですね
[わたしが零した言葉はそんな一言でした]
…いえ、そうやってご家庭と触れ合える時間を取りたい、喜んでもらいたいという気持ちが、とてもお優しいなあ…なんて思うんです。
[お子さんの年齢を聞けば、まだ3歳と1歳であることを訊けたでしょうか。幸い子どもは好きなほうなので、わたしは思わず笑顔になりました
売場を見ながら、……そうですね、たまごぼーろや、誰かからもらったゴーグルの話、ねるねるねるねの話なんかも? もしかしたら聴けたかもしれません]
そうですね…男の子には退屈かもしれませんが、
わたしは、そのくらいのころ、父に絵本を買ってもらったんです。
‥もうすこし大きかったかな。5歳くらいだったかも。
[目を伏せ、懐かしそうに話すわたしの顔は、相手にどう映ったでしょうか]
わたし、双子だったので、いつもおもちゃは必ず二つずつありました。
姉のおもちゃと、わたしのおもちゃ、けんかにならないように、同じものが二つずつ。
でも、わたしたちがその本を見つけたのは、リユースの玩具や服を売る、バザーだったんです。もちろん絵本はひとつしかありません。
[だから最初、父は首を振って、買うのをあきらめようとしたのだと話します。折れないわたしたちに、父は、ひとりには同じ本を新しく買ってあげるからといいましたが、それもわたしたちにとっては違ったんです、とも。]
でも、それでも欲しくて。
『ぜったいけんかしないから』
『ぜったいだいじにするから』
そうやって、ふたりで声をそろえて、わたしたち、父に頼み込んだんです。
そうして買ってもらった本に、わたしたちは揃えてなまえを書きました。父に綴りを教えてもらって、二人の名前を並べて書いたんです。
[それは、今も手元に大切に取ってあります。]
…わたしね。
もちろんその本も、本の内容も、とても好きだったんですけど
それよりも、姉と一緒にひとつのおもちゃを持てたこととか、父にそうやって頼み込んで買ってもらった思い出とか、むしろその思い出があるからこそ、今でも宝物のひとつで。
……あっ、あっ、その。
すみません、関係ない話に浸っちゃって。
その。絵本がいいよ、とかそういう話でもなくて。
…お父さんが何かをお土産に持ってきてくれたというだけでも、きっと喜んでくれると思いますし、そうですね‥わたしなら‥
ホワイト・マーブルに着いてから、一緒に好きなものを選びに連れてってあげる、のが。もしかしたら一番喜ばれるかな?とか思っちゃいました。
[参考にならなかったらすみません、と首を少し横に傾げながら笑います。 *]
─土産物屋にて─
[わたしの言葉に本気で不思議そうな顔をする相手に>>136、わたしはちいさく微笑みます。
相手は見ず知らずのわたしの思い出話に相槌を打ちながら聞き入ってくれました。そして、父も姉も幸せ者だ、と彼は言います。>>138
不幸な家族だと憐れまれて生きてきたわたしにとって、それは二度とない機会のような気もしました。
いつの日か、わたしは「自分が幸せかどうかぐらい、自分で決めたい」と思いました>>0:160。……でも。本当はそうでなかったのかもしれません。
自分が幸せに生きていることを、誰かに知ってほしかった、認めてほしかったのかもしれません。幸せであることすら否定され、今の幸せが虚構であるかのように扱われ。誰一人、わたしたちが幸せであると言ってすらくれなかった。
……だから今。見ず知らずの彼が、そう言ってくれただけでも報われた気がします。幸せなのか幸せでなかったのか、わからなかった"自分”が、赦され、認められた瞬間でした。]
ありがとうございます。
わたしも、……今までは、それが上手くできていなかったかもしれないけれど、でも今からでも子どもたちや奥様に向き合い、考え、喜ばせようとしている、そんなお父さまを持ったこと、家族は幸せだと思います。
……いえ、きっと。これからでも。幸せになれると思います。
[だから、わたしも断言します。あなたのご家族は幸せなのだ、と。これから先、幸せになるのだ、と。]
え。
………これを、わたしに?
[暫しのあと、受け取ったのは2枚のハンカチでした。>>139 思わず目を丸くしてぱちぱちと瞬きをし、相手を見つめます。嘘ではないようでしたので、わたしはお礼を言って受け取りました。]
ありがとうございます。姉も、きっと喜びます。
[わたしを見守ってくれる父も、優しかった母も、仲の良かった姉も、もうこの世にはいないことは、彼には話さないでおきました。家の名を捨て、新たな名前で生きていこうとしていることも。
それでも、すべてを捨ててきたわけではありません。家族と写ったいくつかの写真、父の形見のネクタイピン、母の形見の結婚指輪、そして姉との形見の絵本。
誰かに見せたり話したりすることはないでしょう。わたしが捨ててきたのは、憐れみ、悲しまれ、不幸だと言われる毎日です。わたしは、思い出とともに、密やかに生きていくつもりです。]
…素敵なお買い物、お子さまと一緒にできるといいですね。
それから…奥様とも…
あっ…その、
これは本当に勝手なのですが、
もし奥様がジャスミンのお花がお好きであれば、
ホワイト・マーブルでお花屋さんを探してみるのもいいかもしれないですね。
[宇宙船内に、お花屋さんは……どうだったでしょう。
蛇足のような提案は、本当に、相手にとっては蛇足すぎたかもしれませんが。**]
─夜・通路窓辺─
["ふたりで遠くまで旅する” …これは、ジャスミンのひとつの品種の花ことばです。
昔むかし、わたしと姉・カトレアが、自分たちの名が花の名であることを知ったとき、女の子らしく、ふたりで花ことばを調べたことがありました。
ふたりとも、かわいらしい、という意味合いの花ことばが主流となる中に、わたしたちは、この言葉を見つけたのです。
ふたりで、いつか遠くまで行きたいね。
これは、わたしと姉の小さなころの約束でした。
………………忘れたことなんて、なかった。なのに、わたしはきっと逃げ出したのです。ジャスミンの名前を棄てて、家のことを棄てて、誰も知らない場所で、ひとりきりで生まれ変わろう、なんて。
カトレアのお墓も、思いも、全部あの家に街に国に星に、置いてきて。わたしひとりで旅に出ようとしていました。いえ、旅に出てしまいました。
わたしはいただいた2枚のハンカチを握りしめます。地球の色と、ホワイト・マーブルの色をした、美しいハンカチです。あの頃と同じように、お揃いの。]
いまからでも、始められるでしょうか
[つい口に出しました。といっても、あの家に戻るつもりはありません。棄てたなまえも、決意も、今さら撤回するつもりはありません。でも。…わたしひとりで、ふたりぶん。姉の分まで、遠くへ旅に出ること。それなら新しいわたしでも、できるきがしたから。]
ここに、居てくれるでしょうか。
[問いかけます。口に出した言葉に、もちろん返事はありません。それでもわたしには聞こえます。『だいじょうぶだよ』って。『あなたの幸せが、わたしの幸せ』。そんな都合のいい声、でも確かに聞こえた気がしたんです。
通路の窓の外には、間近に迫るホワイト・マーブルの姿がありました。
“ふたりで”旅して、ここまで来ました。
きっと大丈夫。地球と同じく、水も大地も存在するホワイト・マーブルなら、ちゃんと芽吹くはずだから。**]
─夜・通路─
[ぼんやりとしていたら、声を掛けられました。>>176 以前コーヒーをいただいた際には、ミルクたっぷりでお願いしたでしょうか。>>0:38 その時、彼がアンドロイドであること、乗客のひとりであることをお伺いしたはずです。お名前もお伺いしていましたね。]
ああ。スイッセスさん。そうですね、ホワイト・マーブルが、こんなに近くに。
[展望施設ほどではなかったかもしれませんが、窓辺からも十分それを見ることはできたでしょう。少し微笑んで、指を指します。]
…ああ、ありがとうございます。
えっと、その… 素敵な乗客の方に、プレゼントいただいたんです。
あの、‥‥その。お名前が、わからなくて。
[贈り物までいただいたというのにお名前が分からない失態を恥じるように、取り繕いながらそう言いました。]
素敵ですよね。まるで地球と、ホワイト・マーブルのよう。
わたし、これがあれば、地球のこと、絶対忘れずに済む気がします。
[うっとりとそれを掲げてそう話した後で、ふと、気になることを訊きました。]
人間は…いつか記憶も薄れます。
もちろんその記憶を定着させるような技術だって、きっと無くもないんでしょうけれど。でも、自然な生を選ぶのであれば、やはり。
アンドロイドだと。やはり忘れることなんて、ないんですよね。
[そう、きっと彼はこの先もずっと、覚えているのだと。
……彼の行く末など、わたしには知らない故に。 *]
─昨日・庭園─
[本を読んでいる姿を目撃した話をすれば>>190それは意外だったようで驚いた顔をされました。紙のほうが目に優しい、はまだ分からない感覚。曖昧に笑います。
そんな彼はわたしの手元に目を留めます。それは古びた絵本。唯一無二、というわけではないので、そのタイトルはもしかしたら既知のものだったかもしれませんが。古い、古い、絵本です。]
……子どものころ、買ってもらった大切な絵本なんです。
地球に遺しておけなくて、持ってきちゃいました。
…こうして、たまに読み返すんです。
[好きというよりかは、大切なのだ、とその人には伝わったでしょうか。]
そういう思い出の本とか、あったりしませんか?
[目の前のその人は、どうだっただろうか、なんて。そんな問いかけをひとつ。*]
─夜・廊下─
[名も知らぬ紳士の話。きっと名を聞く機会はもうないのだと思っていました。だからそうですね、まさに名探偵・スイッセスさんの推理に、わたしは目を丸くしたのです。>>203]
ええっ、まさにその人です。
…スイッセスさん、何か探偵用の機能が搭載されているんですか…?
[驚いた顔のまま、大真面目にそんな問いかけをします。たとえば人間の目には見えない指紋が検出できる機能だとか、過去の記憶を読み取る機能だとか、監視カメラと連動してるとか、心の声が聞こえてしまう機能だとか…!? なにそれちょうほしい… いえ、そんな欲望全開のふざけた心の声までは読まれてはなりません。ふるふるふると首を横に振りました。]
[…閑話休題。
そんなスイッセスチョウスゴイアンドロイドノキノウが搭載されていようが搭載されていまいが、やはり記憶はすべて残り続けるそうでした。>>205 その合間に彼が零した妻が亡くなった、ということばは、すこし哀し気に受け止めましょうか。
そうして、問いかけられた質問に、そんな悲しい顔のまま、曖昧に笑って首傾げます。]
…当たらずも、遠からずなんて、ところでしょうか。
地球には思い出、たくさんありますよ。
とても仲の良い家族だったんです。
だから忘れたくないと言えば、忘れたくなんてない。
でも、スイッセスさんの奥様と同じく。家族はひとりずつ、みな、亡くなりました。すべてが仕方のないことだったと割り切るには時間はかかりましたが、…そうですね、亡くなってなお、これから先もずっと覚えていたい、そう思います。
[地球色のハンカチを握りしめ、そう語ります。]
……でもね。
寂しくて悲しくて、どうしようもない時期もあったけれど、
わたし、たぶん前向きなんです。
だから辛くて逃げたいとか、そんなことは決してなくて。
…どちらかというと、周りの目が辛かったかな。
可哀想だ、不幸だと、わたしに対して向けられる目。
…家族が誰もいなくなった今。わたし、ひとりで初めから、皆の分まで、生きてみようと思うんです。
……そんな中で、ひとつ不安があるとしたら、「記憶」だなって。地球から離れて、いつかすこしずつ薄れていく記憶。
……記憶の残るスイッセスさんが羨ましかったりします。
[だから、そんなことを訊いてみたんですよ、と。わたしは添えました。**]
[それからわたしはスイッセスさんの語る記憶の話に耳を傾けます。>>222>>223 記憶の上書き。大切なものは、大切なもので上書きされていくのだ、と。失うことを恐れるよりも、得ることに喜びを感じてほしいのだ、とスイッセスさんは語ります。]
新しい幸せ…
[ゆっくりその言葉をかみしめるように、わたしは独り言ちます。]
忘れることも、怖かったのかなあ…
[これは、独り言でした
いまある幸せを、すこしずつ拾って、見つけて、わたしは暮らしてきました。ささやかな日常を繰り返しながら、少しずつ、記憶が風化してしまうのではないかと、それを恐れていたように思います。
幸せを得ることが、“忘れる決心”だなんてヘンな話だけど
でも、これから新しい暮らしを始めていくうえで、忘れることをも恐れないで生きていくのが、今までのわたしを“棄てる”と決意したわたしの、次なる課題なのかもしれません。]
……実感、わかないですけど、
だけどありがとうございます。なんとなく、心の在りようが見えた気がします。
スイッセスさんの、おかげで。
[そんな風にお礼を述べましょうか。そして思っていたことを口にします]
……あの。
これは、失礼に当たってしまったら申し訳ないのですが
[前置きは、とても大事なので。そんな言葉を添えてから]
スイッセスさんって、とても“人間らしい”なって思います
わたしなんかよりずっと、人の心の在り方がわかってる
[もしかしたらアンドロイドの技術自体がすごいのかもしれない。昨今、色々言われていることも>>265目にしていないわけではありません。でもわたしは、こんな言葉を選びました]
今を生きているスイッセスさんが素敵な方であるのと同時に、
過去を生きていたスイッセスさんのモデルになった方も、とても素敵な方だったのでしょうね。
[詳しくお伺いしていなければ、その方の詳細についてはわかりません。妻が、という言葉からも「そういう」モデルがいるのだと推察くらいしかできなかったんです。
だけど、過去の人格を作り上げたのであろうモデルの方と、今のスイッセスさん、どちらが何か欠けていてもきっといまの素敵なお言葉はいただけなかったのでしょうから。
ふたりでひとり、という言い方も何かが違って
同じ人格、別の人格という言い方も何かが違って。
でも確実に、過去から未来へふたりが紡いで、今のスイッセスさんを作っているのだろうと、わたしは思うのです。 **]
─昨日・庭園─
[深入りしないその言葉が優しく、そして温かく感じられました>>281]
ありがとうございます。
だと、わたしもうれしいです。
[だからわたしも父のことについては触れず、そう答えるに留めて微笑みます。もちろん本心です。
ところで、目の前のひとは、庭で本を読むほどの人ですから(お菓子やお酒を片手にのようですが!)、てっきり本がお好きな方だと思って話を聞いたのです。そうしたら「本は読まない、飽きてしまう」と返ってきた言葉に、すこしびっくりしました。]
そうなのですか?てっきり本がお好きなのかと
……ふふ、もしかして飽きて眠っていらっしゃいましたか?
[くすくすと笑います。もちろん気分を害されるようでしたら謝りました。]
[そんな彼の勧めてくれた本は「冒険」シリーズ。名前は聞いたことがあったでしょうか。わたしの好みは純文学のほうでしたが、ファンタジーや冒険もとても好きなのです。なにせ、今手元に持っている本だって、冒険の絵本でしたから。>>0:37]
ありがとうございます。気になります。探してみますね。
[それからしばし、わたしは絵本を読んだり、穏やかな風景に目をやったりして。夜は言われた通りに図書室に足を運んで本を探してみたりして。(つい読み込んでしまいそうになって、ぱた、と閉じて我慢したりして!)
…いつか本当にどこかで奇跡が起きて、名も知らぬ庭園の隣人とまた会うことがあるならば、冒険シリーズの感想を言えたらいい、なんて、思う一日だったのです。 **]
…わたしの?
[スイッセスさんは家族の話が聞きたいのだといいます。
…拒むことはありません。スイッセスさんに話したのは、きっと15歳よりも昔のこと。まだ父も母も姉も揃っていた時の話。家族四人で行った場所、見た映画、食べたもの。一緒に母と姉とよくクッキーを作った思い出ももちろん話します。
もしも、そんな他愛ない話の中に、なにかスイッセスさんさんとの共通項を見出して、彼が奥様との話を聞かせてくれるのならば、遮ることなく話を聞いたと思います。
きっとそれは穏やかで、静かな時間でした。もう間近にホワイト・マーブルは迫っています。
一段と白く宙を彩るその星で、……いつか。今話した「思い出」と同じくらい大切で、かけがえのない「出会い」があることを、わたしは、…願って。 **]
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