3 ― 星見る手紙 ―
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次期当主 レグルス
「……内密なお話とはそちらでしたか。
私も丁度そのことについてお話ししようと
閣下をお連れしたのですが……
それなら、話は早い。」
次期当主 レグルス
此れ、 を、 見ろ。
誰から 、か 、どれほど、の 価値か。
分から ぬ、 大尉では、 あるまい？
[そう言って息が絶え絶えになりながらも
懐から取り出し、差し出したのは今日届いた手紙。
亡霊の王が綴った手紙を。
受け取り、読み進める大尉の血の気が
見る見る内に引いて行く。]
本当、 士官 学校、時代、から 変わらん、な。
人の 話を、 聞かぬ とこは 。
[左脇腹を抑えた、本を落とした。
本は少し、焼け焦げていた。
将は呼吸を整えた。ふらつかぬよう、倒れぬよう
歯を食いしばった、腹に力を込めた。]
次期当主 レグルス
大尉、手を貸せ。私を 利用、しろ。
私と 大尉が、 目指す 道は 同じ、だ。
この手紙と、差出人。大尉の情報、そして
私の権限、他星、銀河系軍、と、政府への、人脈。
世論を、軍を、銀河間、警察を、
一気に、動かし 一網打尽に、する、武器が
これで……全て、揃った。
次期当主 レグルス
（噫……そうだ。亡霊の王よ。
恨みから、報いから、一歩も逃げんと私は言った。
・・・・・・・・・
だが、貴公の手紙で私は死ねなくなった！）
[Indomitableness……不屈の心を感じた
Endless ambition……果てしない志を、
垣間見た気がしたのだ]
次期当主 レグルス
─亡霊の王に、朝露の光を─
全員、揃ったな。
[評議室に呼び集められた者は将の姿を見て声を上げた、
目を瞠った。軍医をと叫ぶ声を
「いいから聞け、莫迦者」と将は制した。]
皆……よく聞け。
行方を追っていた役者の所在及び安否。
並びに戯曲差出人と
その手の者、協力者の行方と証拠。
戯曲の発行元含めた関係者全ての情報が見つかった。
[思わぬ話に場がどよめく。
大尉だけはばつが悪そうに目を逸らした。]
次期当主 レグルス
[先の途切れ途切れだった声が
嘘のように淀みなく流暢に話す将。
亡霊の王との約束で。
既に破ってしまったが
怪我や病気をしたら悲しむから自分の体を大切にね、と
子へ口にしたお姉さんとの約束で。
貴方とお喋りが出来るの、楽しみにしてるねと
ロサのお姉さんと交わした約束で。
子は気力を限界まで振り絞った。
そして気丈に振る舞った。将としての意地と気力で。
アッサを憧れと言った者の言葉を真にしたいが為。]
次期当主 レグルス
諸君、今まで我々は差出人、協力者、
戯曲の発行元等の物証及び実証を掴めず
摘発不可能な状態にあった。
僅かでも証拠に綻びがあれば
彼奴等は逃さず其処を突くであろう。
万が一逃れられたら一巻の終わり、
逃れた者達が再び繰り返せば？
悲劇が繰り返される可能性は？
同じく発禁・上映禁止指定し
捜査協力関係にある他銀河系性も慎重で、
確たる証拠が無ければ動けまい。
撮り逃しの懸念という、我らと同じ理由でな。
次期当主 レグルス
だが、役者の生存が発覚した。この手紙が証拠だ、
本人と判明した理由は後で説明する。
証人の有無は大きい。
行方不明前の供述も音声ならびに
書面含めた法的証拠として足りよう。
差出人及び協力者、その手の者と
発行元含めた関係者全ての情報と
証拠の収集は、大尉の功績によるものだ。
大尉本人の手により既にリスト化されている。
他星の事件との共通点項目まであるぞ。
戯曲の件で協力関係にある他銀河系星軍部に、
待ち時間の間一斉摘発提唱の連絡をした。
銀河間警察も証拠と情報が揃えば動くであろう。
少なくとも話の分からぬ連中には見えない。
次期当主 レグルス
────時は、来た。
諸君らに私から最後の命令だ。
狂気の戯曲関係者全員、一人逃さず捕らえよ。
二度と新たな被害者を生み出すな。
第二第三の亡霊の王を生み出すな。
摘発と同時に被害者の保護と補償を、
必要に応じて支援を行うように。
次期当主 レグルス
（秘匿情報の公開権限は有るので問題無し。
そして、所在不明者の発見と復帰が確認出来たら
他戯曲流通の危惧と回収・対策を優先し、
役者の保護が遅れたことによる責任で
私の軍籍剥奪という筋書きで行くか。
他銀河系星で複数発生した被害、
保護が遅れなければ、
役者は舞台に立てていたであろう点から
損失期間の責任を問われる可能性もある。
民衆がもしその件で不満を訴えたなら
それを打つける矛先が必要であろう。
実際に極秘任務を請け負い、
指揮した私の非として良くて降格と減俸、
悪くて軍籍剥奪処分が軍部として
もっとも簡単に落とし前をつけやすい。）
次期当主 レグルス
（逆に言うと、今自分が死ねば
任務に関わった誰かが切り捨てられるかもしれん。
部下達に、何ら非は無い。
私は亡霊と約束した。その行く末を見届けるまで、
叶わなかった際は呪いを受ける為。
会うと約束した人、共に話をと約束した人。
いまは、 まだ だめ ───── ）
次期当主 レグルス
[しかし将は、子は、まだ知らない。
自分の未来も命の行方も。
意識を手放した後の彼らさえ。
約束を果たせるかどうかさえも、全て全て。]
演者 シェルタン
――午後の文学資料館――
[いつも通り（プラス、お話会の準備）の業務の中で、昨日受け取ったまま返信を綴れていなかった、資料館員の「フルト」宛ての返信を綴っていく。
ここに記された「甘え」は、少しの甘え、どころの話ではない。
それは、友でもなく、長い付き合いもなく、手紙の上でだけ言葉を交わした相手故に打ち明けられた話でも、きっとあったのだろう。]
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