先生 リトリコ

　
［この時期になると等しく尋ねられる話題に何時もながら曖昧に笑みを浮かべる自身に、子どもたちは何を思ったのだろう。
　自身の机の上には少しばかり萎れている、草花の首飾りが幾つも置かれていた。
　その一つ一つを手に取れば、花の色味は配色が考えられており、茎の巻き方も以前と比べて傷やささくれが少なく、丁寧さが滲み出ている。
　少しずつ上達しているその首飾りたちをそっと胸に抱いて、その思いの詰まった贈り物に静かに瞼を閉じた。
　　　
　興味が無いと、憧れがないと言えば嘘になる。曖昧に笑みを浮かべることしかできないのは、先生という立場の問題だ。
　祝祭の話を耳にしてから、首飾りを密かに作ってみて 季節が過ぎれば他に紛れるように視界の外に追いやっての繰り返し。
　もう、作らなければいいのに。――――、でも。
　引き出しの奥底に眠る、新しく作った首飾りは一縷の期待の現れなのかもしれない。
　
　こんな私でも、物語のような恋ができたなら。
　なんて。］