20 ― 遺されたモノたちの手紙 ―
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不思議な奇跡で繋がったご縁です
顔を突き合わせてとは行かずとも
こうしてお手紙のやり取りを行えることは
何にも代えがたい幸運だと感じています。
せめて動くことが出来なくなるまでは
或いは残る刑期を全うするまでは
こうしてお話が出来ましたら嬉しく思います。
夜の果てから J
(-76) 2024/05/14(Tue) 04:47:44
月季天 ジブリール から 碇星魄 インダラクス へ、秘密のやり取りが行われました。
[ ……手紙を送り終えるのに、一夜を明かしてしまった。
その上、送り終えた直後にアラートが発生している。
『デバイスに問題が発生。エラー情報収集中… 1%完了』
1時間で1%の進捗。復旧までどれだけ時間がかかるのか。
本当に復旧できるのか。
彼女は焦った。
外部との遣り取りが出来るのは、この端末しかない。
この端末が壊れてしまったら、手紙を送ることも、
受け取ることも出来なくなってしまう。
「祈る」ような気持ちで端末の液晶画面を見詰めた。]
(43) 2024/05/14(Tue) 08:27:44
(-77) 2024/05/14(Tue) 08:31:08
はーい、「皆」、おまたせ〜!
[ 墓石が並ぶ区画から少しだけ離れた場所、
他の墓石よりも大きな石碑の前で
イサリビは「皆」の名をひとつひとつ呼ぶ。
ここは、何らかの事情で個別の墓を建立できず
共に葬れる一族の墓もなかった人間たちを
一堂に埋葬した、集団墓地。 ]
でさー、◆◆◆◆◆、実はね実はね〜、
あなたの知り合いかもしれない機械から
今日ねえ、お手紙もらったんだ〜。
ジェイっていう機械、知ってる知ってる?
……あ、知っててもこの名前じゃ判らないかもか。
(44) 2024/05/14(Tue) 09:26:52
まあそれはそれとしてー、
最近さ、紅い薔薇お供えしてなかったよね?
今時でも、ヒガンバナよりは見つけやすいと
思うんだけどなー。またアルバートに頼まないと。
あなたたちが譬え、どんなはみ出し者でも、
触れちゃいけないって言われたヒトでも、
怪物扱いされてたとしても、ボクは
(45) 2024/05/14(Tue) 09:27:52
『 ――なんでこんなひどいことするの!?
カイデお兄ちゃんも、ラデンお姉ちゃんも
きょうだいのイサリビも、なんにも
悪いことしてないのに! 』
『 いいかい、――――。
「墓守」は私たちと同じ人間ではない。
あくまで人間らしく振舞うように
プログラムされた機械なんだ。
人間ではないから、昔話の怪物みたいに
棺の中で眠らせても大丈夫なんだよ 』
(46) 2024/05/14(Tue) 09:28:26
『 ったく、爺やが「墓守」に愛称なぞつけるから
子供たちにも悪い影響が出てるじゃないか……。
あれらはプログラム改竄一つで簡単に
人類殲滅機にだってなるヤツらだぞ? 』
『 お前さん、何も子供の前で
そこまで言うこたぁないだろう! 』
(47) 2024/05/14(Tue) 09:29:05
――――うん、モンスターだったとしても、
ボクは、あなたたちのことも守るから。
……そうだ。
見回り終わったら、また手紙、書いてみるよ。
(48) 2024/05/14(Tue) 09:30:28
[ これは、封筒に収められた便箋のテキスト。
手紙に宛名書きや差出人名の記載はないが、
手紙の発送元の座標軸を示す文字情報は
封筒の用紙に電子情報として埋め込まれている。 ]
聞いて ボクは「墓守」のシリーズ機
ヒトの死を弔い 眠る場所を守る役目
故に「墓守」の思考プログラムは
人間に対し友好的で 共感性持つよう作られている
それでも「墓守」はあくまで機械
プログラムを書き換えられてしまえば
人類の敵にもなる存在なのだと
故に ヒトを助ける存在と定義されながら
まるで古典の怪物のように扱われもした
しゃべる言葉と頭をヒトに似せながら
首から下は 機工が剥き出しのままにされた
(-78) 2024/05/14(Tue) 09:31:19
火葬想 イサリビ から 紫花天 タリアー04 へ、秘密のやり取りが行われました。
キミにも そんな記憶や経験はある?
人間、人類の都合で「怪物」にされた経験
あるいは キミ自身じゃなくても
見知った機械に そんな機械はいた?
ボク自身は 自分が怪物扱いされるのは
別に平気だったんだけれど
他の街の機械はどうだったのかなって
なんとなく気になって 手紙にしてみたんだ
思い出したくない記憶に触れちゃったなら
この手紙は 捨てちゃって かまわないよ
(-79) 2024/05/14(Tue) 09:31:41
火葬想 イサリビ から 紫花天 タリアー04 へ、秘密のやり取りが行われました。
[ 旧式の封筒に紙を用い
先日と同様の方法で手紙を送信する。
形ばかりにはなってしまうけれど、
絵柄の付いた切手を貼付することも忘れない。
今回は、花園に架かる虹の絵を選んだ。
送信相手が住まう花園はどのような姿だろう。
この絵柄とはまた異なるのだろうが。
映像を記録・送信するのは困難なことかも知れぬので
想像の翼ばかりが見知らぬ土地に羽ばたいてゆく。 ]
(49) 2024/05/14(Tue) 09:42:57
……… 少し、身体が重たいですね。
久しく使わずにいた回路に
負荷が集中したためでしょうか。
[“ヒト”の言葉で言えば
『疲労感』のようなものだろうか。
手紙を送るためには、
端末へ手作業で打ち込む、
ケーブルでこの身と専用システムを繋ぐなど
模索すれば別の手立てもあるのかもしれなかったが
文字として書き綴ったものを送付する手法が
どうやら性分には合っているらしかった。]
(50) 2024/05/14(Tue) 09:45:27
[原型の郷愁のコピーを思考部位から一度遮断し、ペデスタルは塔管理を続ける。
各地からの電波の受信状況、塔からの発信状況をチェックしているさなか、管理室内のメールボックスが通知音を響かせた。
自身の頭部が既にパラボラアンテナ化しているペデスタルは、通知音を聞くまでもなく着信に気づいたのだが――]
これは、…――ああ、件の。
[ディスプレイ上の文字を視認しながら、合成音声で納得を呟く。
各種モニターの数値も観測しながら、作業が一段落したところで。
人類による使用向けに造られたキーボードを介し、ペデスタルは文章を打ち込んでいく。]
(51) 2024/05/14(Tue) 09:50:56
楽園の花園、その最後の番人へ
おはよう、こんにちは、こんばんは――
貴方が何時この電信を読むかは判らないが、
貴方の通信を受け取り、キーボードを叩いた。
残念ながら、貴方がたの元にいたと思しき生命体を
此処、××国の電波塔では見ていない。
しかしながら、もし出会うことがあったなら
貴方が花と雨の景色を伝えようとしていた
ことを、私から教えようと思う。
楽園の生命の息吹に、そこに留まる貴方に、
共にこれからも幸があるように。
××国電波塔管理者 ペデスタル
(-80) 2024/05/14(Tue) 09:52:18
電波塔管理 ペデスタル から 碇星魄 インダラクス へ、秘密のやり取りが行われました。
[ 「机に向かって何かを書く」という
機械人形にとっては非効率極まりない動作ほど
しっくりと身に馴染むように『感じる』というのは
技師曰く、不具合の一次段階であるという。
その違和感が
己を構成するパーツの老朽化に因るものか
それとも別の要因であるかは定かではなく
診断も修理も望めなくなった今は
現状維持とする他ないが。
そもそも不具合なのかどうか―― ]
(52) 2024/05/14(Tue) 09:53:08
[ ―― 否、不具合ではないことを
己が一番よく理解っている ]
どうして、今になって………
目を覚まさずに居る方が
貴方にとっても、良かったのではないですか……?
[ わたしの中のわたし。 ]
(53) 2024/05/14(Tue) 09:53:17
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