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[空へと舞い上がって行った封筒を眺めていると、頭上から羽ばたく音がする。
鳥だ、とすぐにわかって窓に駆け寄って視線を左右へと動かした。
鳥は好きだ、空へ飛んでいく姿をずっと見ていられる。
どこにいるのだろうと目を凝らしていれば、白い鳩が静かにこちらへと近づいて──近づいて、窓辺に止まった。]
ふあ……!?
[こんなに近くに鳥が来たことなどない。
ましてやなぜ来たのかもわからず、人形はおとなしい鳩をただただ眺めてその背の荷物に気が付かない。
魔法が多くの運搬を担ってしまうルーナ王国の、ましてや魔法の研究機関の総本山である学びの塔では、生き物が運搬するなど考えられないことである。
だから最初はその鳩の役割などわからず、不思議な鳩だなと思っただけだった。
違うと気が付けたのは、鳩がばさりと翼を一度広げて小さく鳴いたからである。]
は、はと……? ここは、人形の部屋。
ここには鳩にいいものは、なにも……んん?
[くるっく、と鳴いた鳩がクリーム色の便箋をくちばしに摘んで差し出す。
思わず受け取ってしまって、目をぱちくりさせながら見下ろした。]
手紙……? わたし、に?
でも、……あ!
[どこかの、誰かへ。
そう思いながら空へと飛ばした手紙を思い出す。
くるっく、と再度鳴いた鳩に促されるように封を開く。
そこには少しクセのある文字が並んでいた。
一文字一文字追いながら、そこに書かれている全く知らぬ描写に想像の限界を超える。]
[星を見るから、学びの塔の周囲は夜になると暗くなるのが普通だ。
なのにこの手紙の差出人は明るいという。
市街地、とあるからきっとたくさんの家があって大きな建物もあるのだろう。
人形の知識は乏しいから、絵本か絵画の絵でしか見たことがないような風景が、ぼんやり浮かぶ程度だ。]
鳩、ありがとう。
なに? まだある? うわあ……!
[鳩が持ってきたのは手紙だけではない。
そのくちばしにくわえて差し出されていたのは、リボンの結ばれた青い花。]
青い……! きれい……!
花火、の色みたい。
なんの花かな。昨日見た
[くっくる、と鳩は鳴く。
人形はもう一度手紙を読んでから、美しい青い花を机の上にそうっと置いた。
西の魔女から届いた花たちも一緒に並んでいる。]
[手紙を返そう、この場所のことも教えよう。
それから何か、わたしだってもっと、とっても、すてきなものを──
むくむくと湧き上がってくる気持ちがなんなのか人形にはわからなかったけれど、それは再び部屋の外へとかけ出すには十分すぎるものだった。
勢いに任せて飛び出ると、うわっと廊下で声が上がる。
そこにいたのはブーツの修理を頼んだ修理屋だった。]
え? もって、きてくれた……?
あ、ありが、とう……
[困惑しながらも受け取れば、裸足じゃ危ないよとか予備を今度買うように博士に言っておくよとか、修理屋はそんなことを話してくれる。
曖昧に頷きながら、促されるままにブーツに足を入れれば元通りにぴったりと足に合う仕上がりになっていた。
ついでに敗れかけてる部分は革を当てておいたよと言われて、よく見れば一部分に新しい革とその繋ぎ目に装飾の金属が置かれているのに気がついた。]
[足を傾けると、その銀色の装飾はきらりと輝く。
これもきれい、と言っていいだろう。何度も見ていたい。]
この、金属の。
ううん、気に入ったから嬉しいです。
これ、他にもありますか?
[そう聞けば修理屋は店までおいでと言ってくれたので。
まだまだたくさん残っている小遣いを片手に、人形は修理屋まで赴いた。
それから、道具屋で新しい封筒も買ったのだ。]
──学びの塔:人形の部屋──
[人形は新しく買った封筒を前にしながら、ゆっくりと文章を書いていく。
失敗を活かして一度下書きをすれば、ずいぶんと上手にかけるようになった、気がする。
しっかりとインクの出る万年筆が便箋の上を走っていく。
これを読むのはどんな人なのだろう。
名前と国ぐらいしかわからぬ相手のことを思いながら、面識のある人に送るのとは違う緊張と──内側からふつふつわいてくるちょっぴりゆかいな感情に、人形は無意識に鼻歌を歌う。]
〜♪〜♪
[床につかない足をぶらぶらと揺らして。
ゆっくりと文字を書き綴る間、鳩はずっと窓際で待っていてくれている。]
[下書き通りに書いていたはずなのに、つい手が滑って違う単語を書いてしまった。
もうほとんどできていた一枚目の便箋だったから、線を引いて別の言葉にする。
書き終えた便箋を丁寧に半分に折って。
贈ってもらった青い薔薇と同じく、青い鳥が描かれた封筒へと入れた。
それから、修理屋で買ったものを中に入れて、丁寧に糊をつけて封をした。]
鳩、持って行って。
……鳩は、この人に会える?
[鳩に手紙を預けながらそう聞けば、鳩は首を傾げるだけである。
窓の向こうへと軽々飛んでいく姿を見上げながら、人形は──人形は、誰かに呼ばれるまでずっと、そうしていた。]
ライト・ベルターリ様へ
手紙の返事、ありがとございます。
学びの塔は夜暗いから、夜も明るいの、不思議です。
空も地上も、光ってるのきれい、だとおもう。
わたしは学びの塔の中しか知らない、です。
学びの塔は三つの塔があって。
中央の学びの塔がそのまま、名前です。わたしもここ。
星見の塔と、瞑想の塔があります。
わたしは、自律魔法人形で 今年でかどう十年です。
履いてるブーツは、四年目です。
博士のくれたもの だから ずっとはいてる。
YU-K110はかたばん、と聞きました。
ユキナと名前をもらいました。
ライト様は新聞を書きますか
どんな人ですか。あいた おしえてください。
花を、ありがとう。
これは、ばら、ですか?
しらべました 青いのは見たことはないので。
ちがったら教えてください。
リボンもとてもすてき、で。
きらきらしているのとても、きれい。
だからわたしも、キラキラしたものをお送ります。
銀のアミュレット、です。
こうのう、は。「こううん」だとききました。
魔法がかかっているから、願いがかなうかもしれません。
あなたにも、すてきな一日を。
すてきな一日、というのはすてきな言葉。
おしえてくれたの、ありがとう。
ユキナ
―シルワ帝国・ターミナル駅―
どもども〜カルカイト新聞社のライトです。お世話になってます。
[にっこり、といつもの笑顔……よりも五倍ワクワクしながら改札で挨拶をする。
目的はいくつもあるが、主に新聞を売りに来たり新聞社宛てに届いている荷物や手紙を受け取りに来たり。
本来であれば自分よりもう少し後輩の役目であるが、なんせ俺は後輩より記事を書く気が……やる気という物がない。
だから雑用を任される事も多かった。それに、ここには半分好きで来ているから苦でもない。
顔なじみ数人に挨拶をしながらいつものように蒸気機関車へと近寄る。
この駅は終着駅の為、他の場所よりも停車時間が長い上に移動する民の数も多かった。
そんな忙しない空気の中で一人機関車に見とれている人間が居ても誰も気になんかしない。]
はぁ……やっぱりいいな蒸気機関車……ロマンの塊……
[なんて独り言も普段だったら聞かれたりしないのだが、今日は違った。
自分と同い年くらいの青年に肩を叩かれ、猫ばりにびゃっ!と飛び上がれば大笑いされた。]
[空が夕暮れに近くなるころ、人形の部屋に博士の助手が訪れる。]
なんですか。
……夕食。はい、作ります。
[窓を閉じて、人形は部屋をでて博士の元へと向かう。
助手が用意してくれた温かいスープと、人形が焼いた焦げかけのトースト。
それから博士が用意してくれるりんごのジュース。
それが二人で取る食事だった。
博士の部屋の前に来ると、人形はこんこんと扉を叩く。
中から帰ってきた声と言葉に、人形は今日呼ばれた理由を理解した。]
びっ……くりしたぁ!!!!!
なんスか!もう〜〜お疲れさまです!声くらいかけてくださいよ〜
[いやぁ、ごめんごめん。と謝ってもらったもののまだ笑いの波は収まらないようで。
制服に身を包んだ青年は笑い過ぎて浮かんだ目尻の涙を拭いながら一息ついた。
そんなに笑わなくてもいいのに……なんて思いながらも雑談に入る。
ここから噂話が聞けたり、記事のネタになりそうな話題の種を拾えたりするので決してサボりではない。
そういえば、と出て来たのはとある農村の風景。
なんでもその辺りの男の子達が手を振ってくれる事もあるそうで。やっぱり格好いいもな、わかるよ。
うんうんと頷けばまた笑われた。
あぁ、それでね……と制服の懐から出てきたのは1通の手紙。
聞けば亜人の少女に渡されたものらしく。
宛先はなく、ただ、届けてとお願いされたと。]
[人形はひとつ、呼吸をする。
人形は落ちていた横髪を耳にかける。
人形は一度唇を結ぶ。]
きたよ! ご飯食べよ。
[人形はらしくなく声を張り上げて、薄暗い部屋へと体を滑り込ませたのだった。]
へぇ〜!ロマンチックっすね。誰に届けるのもお兄さん次第ってこと?
[これは何かかが起きそうな予感。
といっても、記事というより物語の方が向いていそうなネタで。
自分には縁が無い感じ。もし関われるのなら、車掌の青年が誰かに手紙を渡すシーンの通行人くらいだろうか。
そんな想像をしていた筈なんだが、どうしてだかその手紙は俺の手の中にあった。
はい、じゃあ確かに届けたよって。]
い、やいやいや!僕に渡すのも可笑しくないっスか!?
[車掌のお兄さんはにっこり笑った
機関車を降りて初めて会った人に渡そうと決めてたから、と。]
[カスタードクリーム色の封筒に、揃いの便箋。
紺色のインクには少しだけ金色の輝きが混ざっていた。
決して綺麗な字体では無かったが、迷いながらも丁寧に書かれている事が分かるだろう。]
南の農家のお嬢ちゃん
やぁ、君が書いたボトルメールのようなロマンが詰まった手紙を読みました。
見ず知らずの人間が返事を書いて良いのか迷ったけれども、それ以上に君が悩んでいそうな気がして万年筆を握っています。
どんな言葉をかければいいか難しいけれど。
君は素敵なお姉ちゃんなんだと感じました。
誰かの為に行動できるのは、とっても素敵な事だと思う。
僕は君の弟ではないけれど、ちょっとだけ君の弟くんの気持ちが分かります。
同じような経験をした事があるから。
自分の叶えたい目標を……夢を頭ごなしに否定されるのはとても辛いことだ。
ましてや、大切な家族に認めてもらえない悲しみは計り知れない。
けれどペコちゃんは、そんな弟を見てどうすれば良いか悩んでいる。
それは弟くんにとって、とても幸運なことだ。
今は何も言わずにそっと傍に居てあげて欲しい。
悲しみに襲われている時、一人でいるのが一番駄目な事だからね。
そして落ち着いたら、ゆっくりと話を聞いてあげて欲しい。
どうして勉強がしたいのか、どうしてそれをお父さんに怒られてまでやってみたいのか。
気持ちに寄り添って、納得がいくまで一緒に考えてあげて欲しい。
お父さんも愛する息子が自分の想像以上に成長したから驚いているのかもしれないね。
もしかしたら、お父さんは家業を愛していて、その大切な物を息子に受け継いで欲しかったのかもしれない。
それはお父さんに聞いてみないと分からないけれど。
落ち着いたら話し合ってみても良いかもしれないね。
男同士だから、中々難しいかもしれないけれど。
色々書いたけれど、お父さんの事も弟くんの事もペコちゃんが一番分かっているんじゃないかな
(少なくとも、部外者の僕よりかは)
あまり真に受けずに、君が一番いいと思った行動をすべきだと思います。
良い結末が君達に訪れるよう、シルワ帝国より祈っています。
ライト・ベルターリ
……っと。後は封をして。
やっぱり下書きなしに考えながら書くと長くなるな。
はい、どうせまたあっちの方面に行くでしょう?
人使いが荒いぃ?だって巻き込んだのはそっちでしょ!
生憎僕の鳩は別の仕事してるんで。
ほらほら、お兄さんならこの手紙の子の顔もわかるでしょ?
頼みましたよ〜!
[そうして車掌の手に委ねられた1通の手紙。
宛先はちゃんと書いてあるが、しっかりと届けられたかは車掌次第。
まぁきっと人の良い彼の事だ。文句を言いつつも届けてくれるだろう。]
南の羊飼い バーバは、 農家の娘 ペコ を投票先に選びました。
[筆を取った翌日──。
村の子どもたちが村の隅っこで
一人で暮らしている老婆が
家の中で倒れている姿を村人たちに伝えまわった。
子どもたちがみつけるのがあと少し遅ければ
羊たちも鳴くことができなくなっていただろう。
子どもからもらった便箋はまだ使い切れないまま
幾重にも折り重なっている。]
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