26 ― 境界の先への手紙 ―
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一際大きな気配に弛緩した空気が引き締まった。
そして気付いてしまう。あの大量に迫ってきたドローン群
あれは単なる時間稼ぎに過ぎないのだという事を。
この"大物"を持ち出すまでの繋ぎでしかない事に。
ゆっくりと此方に向かう戦闘用であろうメカ。
人の形をとって、人より大きく、けれど大きな球体を頭部に持つ
その戦闘用メカは、今までのドローンとは比べ物にならないと
確信した私は油断なく構えを取る。
しかし、戦闘用メカの行動は、私の予想を超えるものだった。
(101) 2024/09/28(Sat) 04:07:06
「――」
メカが起動音を鳴らした直後、周囲の景色が変化してゆく。
といっても、どこか別の場所に移動したというわけではない。
目に映る光景が、現在地とは全く異なる姿になっていった。
足元は金網の床。薄暗い室内のような場所。
宙空に浮かぶのは幾つものモニター。
周囲を取り囲むように配置されたその画面の中。
モニターに映されているのは、テストパターンのよう。
(102) 2024/09/28(Sat) 04:08:13
嫌な予感がした。本能、勘ともいうべきそれに私は従う。
身体に活力を与え続ける印を術で刻む。
持久力を上げる事なんて普段はやらない。
それをするまでもなく、無力化すればいいのだから。
しかしどうやら、この"大物"はとても頑丈そうに見えて。
自然、長期戦への備えを選んでいた。
その行動は果たして正解だったのか。
答え合わせをするのにさして時間はかからない。
(103) 2024/09/28(Sat) 04:08:45
メカから聞こえる機械音と共に、頭部にある"目"のようなもの
そこに光があつまってゆく。
収束した光は宙空に浮かぶモニターに放たれ――
「――やば」
モニターからモニターへ、すさまじい速度で乱反射してゆく。
光を追うのは途中で止めて、防御姿勢を取ったのは無意識だ。
(104) 2024/09/28(Sat) 04:09:42
叩き込まれた光。衝撃、熱、痛みに膝をついてしまう。
腹部にあてがった掌が熱を帯びる。
術による負傷の回復を図ったけれど、それを邪魔する様に
"敵"は腕部に出力させたブレードで突進攻撃を敢行してきた。
あの"乱反射するレーザー"は対処が非常に難しいけれど
直接的な攻撃ならばいくらでも対応が出来る。
突進攻撃の後、間隙なく放たれる"敵"の攻撃を回避しつつ
なんとか負傷の治癒に成功したけれど、"敵"はまた
甲高い音を立てて光を収束し始めた――
(105) 2024/09/28(Sat) 04:10:26
何度か乱反射する収束レーザーを受けて傷を癒して
読み取れたことがある。
収束レーザーは一度はなってしまえばそれなりのクールタイムが要る
どうやらこの収束レーザー以外に"敵"には直接的な攻撃しかない。
そして、間隙の直接的な攻撃は十分に対処が可能。
つまり、こいつの攻略方法は…
「レーザーに耐えて動かなくなるまでぶん殴ればいい、か」
身も蓋もない話だが今の私に出来ることは少ない。
こちらが傷を癒すことが出来なくなるまで消耗する前に
"戦闘メカだったもの"に変えてやれば万事解決する。
ならもうやることは一つ。何も考えずに殴るだけ
(106) 2024/09/28(Sat) 04:11:10
(107) 2024/09/28(Sat) 04:11:58
…嵐が吹き荒ぶ
風雨が 雷が 穏やかな海を襲う
虚の闇に逃げ込んだ動物たちは その泥は
皆々 自分のところに落ちてはくれるなと
願い続ける 祈り続ける
(108) 2024/09/28(Sat) 08:50:14
" ザアアアッ ザアァァァッ "
"ガララ…ガララララ……"
"ドオォンッッツ パチパチ…パチパチ…"
"ガララ…ゴロロ…ガラララ…"
" カッッ!!! "
” ピシャアァアン!!! "
(109) 2024/09/28(Sat) 08:55:36
『…… ………ーー!!!!』
遥かな上からパチパチと 何かが爆ぜる音がする。
先程の雷鳴 空を切り裂く雷霆の怒りが
…これまで 護ってくれていた
偉大な大樹に降り立ったのだ。
罪人を隠すことを咎めるように
『…っ、……っっ』
バチバチ、パチパチと爆ぜる音。
どうやら衝撃で幹そのものに火がついたらしい。
葉が多いために雨風から 身を守れていたそれは
今は自らを蝕む炎さえ護り そのまま諸共燃え上がる。
(110) 2024/09/28(Sat) 09:01:25
当然いずれはここが燃え上がる。
そうでなくても、上層が燃え上がっている以上ここにも熱は伝わるだろう。
泥の体が蒸発してしまうと一体どうなるのか…想像しようにも そうなったことのない以上泥の頭ではすることなど出来はしない。
『……っ、 …‥……ッッッ』
バリケードで入り口を塞いでいるせいで、
外に出ることも、手紙を出しに行くことも
鞄や無数の小瓶たちを外に連れ出すこともできない。
上の方では何かが崩れるような音がする
終わる こんどこそ
すべてが ものがたりが ぜんぶ
(111) 2024/09/28(Sat) 09:20:56
おわっ て し まう
なにも かも
■に つたえたかった ものがたりが
ようやく みつけた
■■■■■・■■■■■■の
さいご の ■■■が
(112) 2024/09/28(Sat) 09:23:09
………… 化物はその体を溶かす。
どろり 身体の形を無くしてしまうまで
増え続ける泥の肉体で
護るべきものの上に覆いかぶさる
そうしたい そうありたいからそうするんだ
(113) 2024/09/28(Sat) 09:27:07
…だって そう
だれか に きづいて ほしいから
"きみ" に であって ほしいから
この ものがたりを しゅうえんを
" きみ " の せかい に とどけたいから
(114) 2024/09/28(Sat) 09:31:56
――……。
返信を綴っていた俺はこの時、終焉の星から手紙を送ってきたその人に対し、“沈黙の嘘”を吐くのをやめた。
別に、説得のためだとか考えた訳じゃない。ただ、俺「も」打ち明けるべきだと考えたからだ。……向こうにその心算は無かったんだろうが、さ。
(+60) 2024/09/28(Sat) 09:34:35
…燃え上がる 大樹の下。
爆ぜる音の向こう側。
嵐は止まぬ。嵐は荒れる。
しじまのうみを 飲み込んで。
(115) 2024/09/28(Sat) 09:34:40
……いや。
未練を、苦悩を、痛みを、
吐き出したかっただけ、なんだろうな。
(+61) 2024/09/28(Sat) 09:36:24
――………………。
あの人への返事をここでしたため、封をした今。
残りの便箋も封筒も、1枚ずつが残るのみ。
――あの妖精/人間の安否を問う手紙は、
多分、俺からは、今は送っちゃいけない。
あの日のヘロンからの最後の忠告は、部外者である俺に
あの国のことを記憶させながらも、
それでも「革命」の巻き添えにさせないためだったんだろうから。
(+62) 2024/09/28(Sat) 09:42:43
――………………。
これは少し、気が早いかね。
例のステアが治まったってニュースも、
あれから特に見かけてはいないし。
それでも手元に在る最後の1枚を、
アイツに送ろうと考えたのは――
(+63) 2024/09/28(Sat) 09:44:40
ああ、「帰れたらいい」なんかじゃなく、
はっきりと「帰ってくる」って、伝えたくなったからさ。
……ああ、これは、ずっと抱え込んでいたものを、
ここで吐き出せたお陰、だったのかもしれない。
(+64) 2024/09/28(Sat) 09:56:18
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