3 ― 星見る手紙 ―
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青年 シャト に 7名が票を入れた。
青年 シャト が断頭台の露と消えた。
翌朝、 旅行者 パウゼ の死が告げられた──……。
現在所在が確認できるのは 影絵の郵便局員 リリス、 次期当主 レグルス、 演者 シェルタン、 星の停滞 ステラ、 新米修復家 キュー の 5 名。
影絵の郵便局員 リリス
今日も
それに、 ――――…
[郵便局の窓越しに眺める、広漠とした暗い空。
主星がぎらぎら輝く反対側で、他の数多の星々もまた細やかな光を放つ。]
影絵の郵便局員 リリス
ワタシ、時々思うのよ。
ワタシたち銀河間郵便局のお仕事って、
昔ならきっと信じられないくらい
とてつもなく大変なことなんだって。
影絵の郵便局員 リリス
だって、遥か離れた銀河の彼方にだって
やろうと思えば1日で手紙を届けられるんだから！
[ここでの「1日」が具体的に何秒間を指すのか、はともかくとして]
銀河間の物質転送装置の発明だけじゃないわ。
星々に届ける船自体の性能も良くなったから、
これだけ迅速にお手紙を届けられるようになった。
そして迅速に届けるためには、ここで陰ながら働く
ワタシたちだって頑張らなきゃ、って。
影絵の郵便局員 リリス
……頑張ってるワタシが、アナタに見える訳じゃ
きっと、ないでしょうけれどもね。
[遠く、遠く、遥か離れた銀河の彼方――。
睫毛の淡い緑に照らされた、オレンジの炎のごとき両目は、その方角を暫く見つめていた。
それから程なくして、リリスはいつも通りに、仕分けの最終チェックの業務に取り掛かる。]
影絵の郵便局員 リリス
「あの、リリス先輩……。
1日で届くってことは、日付変更時から気合入れて運べば
今日が終わっちゃうギリギリまでには
なんとか届けられる、ってことなんでしょうか」
[新人の郵便局員は、敢えて空気を読まずにリリスにおずおずと問いかける。]
新米修復家 キュー
[銀河中にいる人たちとの手紙のやりとり。
それは、一人で宇宙に出れる日をただ待ち続けていた僕の日常をちょっとずつ変えていく。
その日もまた、どこかからの手紙が届いてないか、確認しようとして。
僕は、出星管理局から、電子メールが届いていることに気づいた。]
新米修復家 キュー
["出星管理局から 出星申請についてのお知らせとご案内"
そこに僕の出星を許可する旨、宇宙船の出航する日時、パスポートに関する案内などが映し出されていた。]
新米修復家 キュー
[だけど、僕はどこか、それを現実味なく感じていて。
たぶん、夢見心地だった。
ぼんやりして、泣けないのに、笑えなくて。
それがひどく苦しい。
やっと、宇宙に行ける。
ただそれだけを思った。]
演者 シェルタン
《 昨日、あの手紙を読んでから、
夜が明けるこの時まで。
“ 僕 ”はどうしていたのか、
不思議なくらいに思い出せない。 》
演者 シェルタン
《 ――いや、少し思い出した。
「良かった」って思ったんだ。
本当に自分勝手に、そう思った。 》
《 自由を希うのはあくまで僕の信念。
それにあの人を巻き込んではいけない。
だから僕は神さまを裏切りながらも、
神さまから御役目の糸を結ばれた
あの人の立場は尊重しようとした。
それでいて、聖者を惑わす悪魔のように
「御役目に耐えられなくなったら」なんて
誘いを文に認めてしまってもいた。
矛盾に満ちた僕の、自分勝手な安堵だ。 》
演者 シェルタン
《 呪詛吐きながらも朝露の光を希う、
棘の城に囚われた亡霊の王。
そんな死人の願いが獅子の君に届くなら、
最果てに来て、という誘いの必要もなく
鳥籠に残ったあの人にすら会えよう。
そしてあの人が鳥籠からも出られるなら、
僕らを阻むものなんて何もないって―― 》
演者 シェルタン
《 ……先のことまで、僕は何も知らなかった。
大人たちからも、姉さんからも、
アルレシャ自身からも、知らされていなかった。
そして僕は、想像すらも及ばせていなかった。
それは、本人にすら分からないという
夢から醒めた夢渡りの未来。
あの人はこれから何処に導かれるのか。
或いは――何処にもいられなくなるのか。 》
演者 シェルタン
《 神さまの糸を切ってしまったのは、
紛れもない、僕なんじゃないか。
「会いたい」の願い届く前のことだろうに、
手紙を送り続けた僕の傲慢が過りもし――。 》
《 なんであの時、嫌いになれなかった。
そんな疑問が微かに浮かびもすれど。
じゃああの時己を厳しく否定され、
笑顔で説かれる教えを受けていたならば、
すぐさまに想いの糸を切れたのだろうか。 》
演者 シェルタン
《 ……どうしようもなく、胸が痛い。 》
会いたい。
会いたい。
あいたい、
あいたい、 あいたい ……。
《 でも、“ 僕 ”には解っていた。
僕の胸が痛む理由――じゃなくて、
“ 僕 ”が、胸が痛くなるくらい苦しい理由。 》
演者 シェルタン
《 だって、僕の想いも涙も、
神さまから授かった幸いなんかじゃなく、
僕自身の苦しみであり幸せ、なのだから。
……だから、 》
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