星狩りの国-暁の街-


21 【完全RP村】夜間飛行で追い越して


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曇硝子 スイッセス

[沈黙が流れる。マイケルは頬を摩ったのち、大きく息を吐く。
そして私にこう言った。

『……お前の中には、生きているのか?』と。
それが彼の父親、スイッセスの事を指すのは言うまでもないだろう。
私は躊躇いなく、力強く頷いた。

マイケルは…ただ、青ざめた顔をして。眉を寄せて押し黙る。
ふう、と大きな溜息。

『……父さん。』

たった一言だが彼は私をこう呼んだのだ。
初めて、息子として。]

(56) CClemon 2024/06/04(Tue) 13:22:04

曇硝子 スイッセス

――そして――

[数日後、私は借りた小さな部屋に居を構えていた。
就職先はすんなりと決まったし、新しい生活が始まる事となる。

新しい仕事はとある老人ホームでの給仕と清掃、老人たちの身の回りの世話だ。私の生活費をさっぴいた賃金はマイケルに送金される。

私の記憶は……そのまま、消されずに、在る。
あの後、マイケルは私にこう言ったのだ。

『お前の中に父さんがいるのなら、母さんも一緒にいさせてやらないと可哀想だ。だから、記憶の消去はしない。そのかわり今すぐこの家を出ていってくれ。

じゃないとまた、泣いたり怒ったりしてしまうから。』]

(57) CClemon 2024/06/04(Tue) 13:23:05

曇硝子 スイッセス

[『ほら、さっさと行け。

…行けよ、父さん。』

彼自身がもう父親であるし、子供という歳でもない。
だから私を親と思っても甘えたりは出来ないのだろう。

記憶の消去をしないと宣言した彼はどこか晴れやかな顔をしていた。
そして、最低限の荷物を持って出ていく私を見送ってくれたのだった。

こうして私はホワイト・マーブルでの新たな道を歩むことになる。

スイッセス・サイフォンは故人の名前だからもう使う事は出来ない。
代わりに私は新しい名前で生きる。

スイッセス・サンとして。]**

(58) CClemon 2024/06/04(Tue) 13:24:12

曇硝子 スイッセス

――自室(過去軸)――

[お互いに勘違いをしてしまう、すれ違う事はよくあることだ。私は急いでいた訳ではない。ただ、アーネスト側に火急の要件があると思い込んでしまっていたのだ。
そして律儀な彼女は私の為に一刻も早くと馳せ参じてくれた。

いつだってヒーローは、呼べばすぐ駆けつけてくれる。

ノックに応えて私は扉を開く。そして――
息を飲んだ。

私の反応の理由を賢い彼女はすぐ察したのだろう。
続く言葉は照れを滲ませて。その頬が桜色に染まっているのを私は見逃さない。
顔を臥せるように下を向いたって、私はちゃんと視界に捉えた。

ふ、と肩の力を抜き。]

(62) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:05:53

曇硝子 スイッセス

  ……いらっしゃい、アーネストさん。
  とてもお似合いですよ。
  
  ――美しい。
  妻の花嫁姿を思い出しました。>>40

[純白は彼女の潔癖な心のようであるし、そしてウェディングドレスを彷彿させた。
胸元に飾られたネックレスもほんのり咲いて白を引き立てる。]

  さあ、入ってくださいね。
  どうぞ。

(63) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:06:21

曇硝子 スイッセス

[私は身を引いて彼女を招き入れる。船室はVIPルーム(もしかしたら社長さんが利用しているかも?)以外は同じ構造だろう。
それでも彼女は珍しそうにきょろと、そわとする。
足取りは宙に浮いているようだ。
無重力をさ迷うように。

彼女は私が飾っているサインに気付いたようだ。
弾む声に喜びが滲んでいる。]


  ええ、勿論です。
  毎日眺めていましたよ。  
  ホワイト・マーブルで私がどんな住居に住むのか
  まだ決まっていませんが、
  その部屋にも必ず飾りますね。>>42

(64) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:06:45

曇硝子 スイッセス

[眺めるだけで元気の貰える魔法の色紙だ。お礼を重ねたいのは私の方なのだが、彼女は何故か律儀に頭を下げる。

その腰の低さこそ、彼女の人としての美徳だ。
ヒーローでありながら偉ぶるそぶりは全くない。
むしろ弱き者とも、他人とも同じ目線に立つ人。

…その人格は私をまた魅了する。
おまけにこの美しいドレスだ、一体彼女は私をどうするつもりであろう?

魔法を掛けられてしまうのは、私なのか?]

(65) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:06:58

曇硝子 スイッセス

  いえいえ、これは私の宝物ですからね。
  飾るのは当たり前なのですよ。
  もし何か辛いことがあっても、
  このサインを見るだけで私は
  立ち向かう勇気を貰えそうですからね。

  …ああ、そんな。
  あの手紙だけでも十分嬉しかったのですが…
  
  貴女が悪い男を退治し、
  ビューさんを無事に救い出し、
  二人で珈琲を飲んでくれたなら、
  私はそれだけで満たされたのですが。

  でも…

(66) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:07:10

曇硝子 スイッセス

[彼女は私の珈琲豆を受け取ってすぐ、絵葉書を寄越してくれた。
勿論それも大切にしまってある。その熱いメッセージと共に。

私は言葉を切り、彼女をもう一度見つめた。すらりとした背丈はモデルのようだし、均整の取れた身体である。スタントマンという職業、ヒーローであるために鍛えているのは伊達じゃない。

それを包む真白の美しさは、惑星ホワイトマーブルにひけを取らなかった。]

(67) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:07:24

曇硝子 スイッセス

  こんな美しい貴女に逢えたのなら。
  その誉れ与れたのなら、
  貴女の律義さを喜ばねばなりませんね。


[しかしこうして見れた美しい姿も、私は記憶を消されたら忘れるのだ。
私の胸がちくりと痛む。
その様子を気取られたのか、彼女は私に想いをぶつけてくる。

とても勢いのある言葉だ。>>44住所を教える事は私にとってさほと抵抗のある事ではない。
ただ、マイケルが私の見知りに誠実な対応をしてくれるか、私がそこにいるかいないかも記憶があるかも未定だったので、特に誰かに教える事がなかっただけで。

ぱちりぱちり。瞬きの後、ふっと吐く息は溶けるようで。] 

(68) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:12:03

曇硝子 スイッセス

  わかりました、後で教えますね。

  ……本当にありがとうございます。
  私の事を友と思ってくれて。
  貴女は、
  もし私が記憶を失おうとも、何度もでも
  来てくれるのでしょうね。

  本当に貴女はヒーローだ。
  その駆けつける姿は。

  ……いえ、今の美しい貴女は。

(69) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:12:22

曇硝子 スイッセス

[感極まったのだろうか、彼女は涙を零している。彼女の頬を伝う透明な宝石。
ああ、こんな姿を見せられたなら。
私はどうしたって止まる事なんか出来ないではないか。

あの時はおじいちゃんとして頭を撫でた。

でも今は。]

(70) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:12:38

曇硝子 スイッセス

  今の美しい貴女は…ヒロインですね。


[一歩、二歩と前に進み私は彼女の前に立つ。そして両手を広げる。
頭を撫でる方が望みだったら申し訳ないのだけれど、泣いている女性を前にして男が選ぶ行動は一つ。

この腕に彼女を抱き締める事は叶うか。
私はそっと、両腕を彼女の背中に回してみる。

包み込みたかった。

熱くて強くて。優しくて脆い彼女を。]*

(71) CClemon 2024/06/04(Tue) 18:13:25

曇硝子 スイッセス

――ニュース番組(ホワイト・マーブルのテレビで流れた映像)――

[夕方のニュース番組にて、こんな特集が組まれた。

『働くアンドロイドたち』
これは、様々な場所で色々な仕事に従事するアンドロイドの姿を取材したものである。

宇宙船「リベルテ」のペンギンアンドロイドたちを皮きりとし、カフェで働くメイドアンドロイドから、コンビニバイトアンドロイドまで。

『今や人々の生活を支える要と言えるアンドロイドたち。その容姿、能力も様々に異なります。

次は、老人ホームにて働くアンドロイドに話を聞いてみましょう。
すみません、ちょっと宜しいですか?』

その時の私は勤め先である老人ホームにて珈琲を淹れていた。
私の点てる珈琲は入居者たちには大変好評である。

ただちょっと変わった点があるとすれば、私の見た目も老人であるという点だ。]

(87) CClemon 2024/06/04(Tue) 20:33:00

曇硝子 スイッセス

[一見するだけでは入居者とあまり変わらない。

最初インタビュアーは間違えて私の老人に声を掛けそうになり、慌ててマイクを向けなおした。]


  はい、なんでしょう?
  …ええ、私はここで働くアンドロイドです。


[インタビュアーに私は向き合う。カメラが向けられた。うっライトが眩しい。
目を細める。

『ここではどんなお仕事をされているのてしょうか。』]


  清掃や物の運搬、雑用から施設管理、入居者の介助まで。
  出来る事は全てですね。

  こうして珈琲を淹れるのも私の仕事でして。

(88) CClemon 2024/06/04(Tue) 20:33:43

曇硝子 スイッセス

[掃除はアンドロイドではなく掃除ロボットでもいいし、珈琲だって珈琲メーカーでも事足りる仕事だ。では何故私がここで働いているのか。

インタビュアーは重ねて聞いてくる。]


  …人は、人の暖かみを求めるからですよ。
  ロボットたちに暖かみがないわけではありませんが、
  人型である私が寄り添う事が、
  ここの入居者たちの癒しになっているのです。

  …そう、皆さん仰ってくれています。

[すると傍にいたおばあさんが口を挟んだ。彼女は入居者の一人だ。

『そうですよ、スイッセスさんの淹れる珈琲はね、珈琲メーカーの味気ないものとは違うんですよ。』]

(89) CClemon 2024/06/04(Tue) 20:34:27

曇硝子 スイッセス

[『スイッセスさんが来てくれてから、あたしは珈琲タイムが楽しみで仕方なくて…
彼はね、あたしの家族の話しや昔話しも、みーんな聞いてくれるんですよ。

見た目もねえ、あんまり若いイケメンだとあたしは落ち着かないけれど、
ほら、あたしたちに近いでしょう?
仲間みたいって思うから…とても安心するんですよ?』

インタビュアーはおばあさんの話しにふむふむと頷いてカメラを向けた。
そしてインタビューを締めくくる。

『現在人口の激減を受けて、人の労働力は極端に減っています。それを補うアンドロイドは働き手として重要です。

しかし、こういった仕事は補いさえすればいいものではありません。

人の心を癒すアンドロイドの存在は、これからの社会を変えていくかもしれません。』]

(90) CClemon 2024/06/04(Tue) 20:35:05

曇硝子 スイッセス

[放送はそこでスタジオへと返された。

さてはて、私の顔も名前もばっちりとテレビに映ってしまったわけだが。
もしかしたら誰か知り合いがテレビを見てしまうかもしれない…?

今更ながら、私は顔から火が出そうになり蹲ってしまうのであった…。]**

(91) CClemon 2024/06/04(Tue) 20:36:24

曇硝子 スイッセス

――十数日後、某老人ホーム――

[新しい仕事、新しい職場。私はそれにすぐ馴染み、せっせと毎日を送っていた。
日々はあっという間に過ぎていく。

お掃除も楽しい。うきうきとモップを使っていると、近づいてくる人影。>>99
私はアンドロイドであるから、職員として現入居者の顔と名前は全て把握している。つまり彼は、この老人ホームの入居者ではない。

掃除の手を止めて顔をあげる。]


  こんにちは。
  私はここで働いているアンドロイドです。
  もしかして入居希望の方ですか?
  そうでしたらあちらに事務室が…

(107) CClemon 2024/06/04(Tue) 22:50:20

曇硝子 スイッセス

[なんて話しながら気付く。彼の顔を船旅の最中見たことがあるのに。

私が覚えていたのは彼の立派な髭だ。
山のように綺麗な形の口髭と、整った顎髭。
カッコいい、とても…!
見掛けた時に「私も生やしたかった」と顎を撫でたものである。
間違いない、このダンディな髭…
それで私は彼に訊ねる。]

  あのう、つかぬことをお聞きしますが、
  リベルテという宇宙船に乗って
  ホワイトマーブルに来られた渡航者の方です?*

(108) CClemon 2024/06/04(Tue) 22:51:22



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