星狩りの国-暁の街-


26 ― 境界の先への手紙 ―


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視点: 人

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"トラッシュ" イオニス


 でも、私は知ったんだ。
 こうやって誰かの為に犠牲になったら
 その人はきっと、ずっと、苦しむことになるのだって。私はずっと苦しかったんだって


 何かあればすぐに涙がこぼれそうになるし
 辛くて苦しくて悲しくて、眠れない日を何日も過ごした。
 仲間の犠牲で永らえた命だから、捨てる事すら出来ない。


 なら、簡単なことだ。そんなのは此処で止めてしまえばいい。
 私には、それを理解してるのだから。
 残される人間の苦しみを、悲しみを。
 こんな苦しみを知る人間は、少ない方が良いに決まってる。
  

(96) 2024/09/28(Sat) 04:01:02

"トラッシュ" イオニス


「死ぬわけないじゃない。
 残された人間が苦しむのは私が知ってる。
 悲しい思いをするのは私一人で十分だからね。」


 私は、少年を下ろして、背中を押す。


「さあ、走るんだ。後ろを振り返らずに全力疾走。
 私が戻ってくるまで、森に入らないように言うんだよ。」


 私は少年に背を向け、ドローンたちと正対する。
 少年は少し逡巡したようだけど、念を押すように
「帰ってきてよ!」と声をかけた後、私の言うとおりに
 全力疾走をしたのだろう。急速に気配が遠のいてゆく。
 

(97) 2024/09/28(Sat) 04:01:53

"トラッシュ" イオニス


 コアを所持していないのをドローンどもは承知しているのだろう。
 先ほどまで執拗に狙っていたはずの少年を完全に無視し
 私の方に標的を切り替えたようだ。


 ここから、街までは幾らもかからない。
 それに少年は同年代の子供と比べてかなり鍛えられている。
 心配をする必要もないだろう。
 

 一足に距離を詰め、ドローンの一体を手にした剣で突き斃す。
 

(98) 2024/09/28(Sat) 04:02:58

"トラッシュ" イオニス


「まあ、街には戻れるだろうけれど。
 時間が掛かると足手纏いを大勢連れてくるかも知れないし
 ちょっと"巻き"でいったほうがよさそうだ――ねっ!」


 言葉と同時に振るった剣から放たれた衝撃波が
 上手くドローンを数体巻き込んだようだけれど
 どうやらどんどんと増援が送り込まれてるようで。
 "敵"の数は減っているようには思えなかった。


 ここから先は、我慢比べになるのだろうか、と
 少しだけ、私は辟易とした気持ちになったのだ。
 

(99) 2024/09/28(Sat) 04:03:55

"トラッシュ" イオニス




「――ほい、っと」


 といっても、無限に兵力があるわけでもないようで。
 50を超えたあたりから数はどんどん目減りしていった。
 握りしめた拳で打ち据えて、そのまま地面に叩きつけたドローン。
 今ので斃した数は70程。周辺には敵性物体は感じられず


 武装だけを見れば十分このドローン群は危険だったので
 潰しきれたことに安堵が出る。


 しかし、これだけの量のセキュリティを擁しているなんて
 あのコアの中身は一体何なんだろうか、なんて、思考を巡らせた時
 

(100) 2024/09/28(Sat) 04:05:33

"トラッシュ" イオニス


 一際大きな気配に弛緩した空気が引き締まった。 
 そして気付いてしまう。あの大量に迫ってきたドローン群
 あれは単なる時間稼ぎに過ぎないのだという事を。


 この"大物"を持ち出すまでの繋ぎでしかない事に。
 ゆっくりと此方に向かう戦闘用であろうメカ。
 人の形をとって、人より大きく、けれど大きな球体を頭部に持つ
 その戦闘用メカは、今までのドローンとは比べ物にならないと
 確信した私は油断なく構えを取る。


 しかし、戦闘用メカの行動は、私の予想を超えるものだった。
 

(101) 2024/09/28(Sat) 04:07:06

"トラッシュ" イオニス


「――」


 メカが起動音を鳴らした直後、周囲の景色が変化してゆく。
 といっても、どこか別の場所に移動したというわけではない。
 目に映る光景が、現在地とは全く異なる姿になっていった。 


 足元は金網の床。薄暗い室内のような場所。
 宙空に浮かぶのは幾つものモニター。
 周囲を取り囲むように配置されたその画面の中。
 モニターに映されているのは、テストパターンのよう。
 

(102) 2024/09/28(Sat) 04:08:13

"トラッシュ" イオニス


 嫌な予感がした。本能、勘ともいうべきそれに私は従う。 
 身体に活力を与え続ける印を術で刻む。
 持久力を上げる事なんて普段はやらない。
 それをするまでもなく、無力化すればいいのだから。


 しかしどうやら、この"大物"はとても頑丈そうに見えて。
 自然、長期戦への備えを選んでいた。



 その行動は果たして正解だったのか。
 答え合わせをするのにさして時間はかからない。
 

(103) 2024/09/28(Sat) 04:08:45

"トラッシュ" イオニス


 メカから聞こえる機械音と共に、頭部にある"目"のようなもの
 そこに光があつまってゆく。
 収束した光は宙空に浮かぶモニターに放たれ――


「――やば」


 モニターからモニターへ、すさまじい速度で乱反射してゆく。
 光を追うのは途中で止めて、防御姿勢を取ったのは無意識だ。
 

(104) 2024/09/28(Sat) 04:09:42

"トラッシュ" イオニス

 
 叩き込まれた光。衝撃、熱、痛みに膝をついてしまう。
 腹部にあてがった掌が熱を帯びる。
 術による負傷の回復を図ったけれど、それを邪魔する様に
 "敵"は腕部に出力させたブレードで突進攻撃を敢行してきた。


 あの"乱反射するレーザー"は対処が非常に難しいけれど
 直接的な攻撃ならばいくらでも対応が出来る。
 突進攻撃の後、間隙なく放たれる"敵"の攻撃を回避しつつ
 なんとか負傷の治癒に成功したけれど、"敵"はまた
 甲高い音を立てて光を収束し始めた――
 

(105) 2024/09/28(Sat) 04:10:26

"トラッシュ" イオニス


 何度か乱反射する収束レーザーを受けて傷を癒して
 読み取れたことがある。
 収束レーザーは一度はなってしまえばそれなりのクールタイムが要る
 どうやらこの収束レーザー以外に"敵"には直接的な攻撃しかない。
 そして、間隙の直接的な攻撃は十分に対処が可能。


 つまり、こいつの攻略方法は…


「レーザーに耐えて動かなくなるまでぶん殴ればいい、か」


 身も蓋もない話だが今の私に出来ることは少ない。
 こちらが傷を癒すことが出来なくなるまで消耗する前に
 "戦闘メカだったもの"に変えてやれば万事解決する。
 ならもうやることは一つ。何も考えずに殴るだけ
 

(106) 2024/09/28(Sat) 04:11:10

"トラッシュ" イオニス



「それじゃあ、もう一、回我慢比べといこうか――」
 

(107) 2024/09/28(Sat) 04:11:58

探偵殺しの泥 ガァド



 …嵐が吹き荒ぶ
 風雨が 雷が 穏やかな海を襲う
 虚の闇に逃げ込んだ動物たちは その泥は
 皆々 自分のところに落ちてはくれるなと
 願い続ける 祈り続ける

 

(108) 2024/09/28(Sat) 08:50:14

探偵殺しの泥 ガァド



" ザアアアッ ザアァァァッ "

     "ガララ…ガララララ……"

"ドオォンッッツ パチパチ…パチパチ…"



     "ガララ…ゴロロ…ガラララ…"




     "  カッッ!!!  "


”  ピシャアァアン!!!  "


 

(109) 2024/09/28(Sat) 08:55:36

探偵殺しの泥 ガァド



『……  ………ーー!!!!』


遥かな上からパチパチと 何かが爆ぜる音がする。
先程の雷鳴 空を切り裂く雷霆の怒りが
…これまで 護ってくれていた
偉大な大樹に降り立ったのだ。
罪人を隠すことを咎めるように


『…っ、……っっ』


バチバチ、パチパチと爆ぜる音。
どうやら衝撃で幹そのものに火がついたらしい。
葉が多いために雨風から 身を守れていたそれは
今は自らを蝕む炎さえ護り そのまま諸共燃え上がる。

(110) 2024/09/28(Sat) 09:01:25

探偵殺しの泥 ガァド



当然いずれはここが燃え上がる。
そうでなくても、上層が燃え上がっている以上ここにも熱は伝わるだろう。
泥の体が蒸発してしまうと一体どうなるのか…想像しようにも そうなったことのない以上泥の頭ではすることなど出来はしない。

『……っ、 …‥……ッッッ』

バリケードで入り口を塞いでいるせいで、
外に出ることも、手紙を出しに行くことも
鞄や無数の小瓶たちを外に連れ出すこともできない。

上の方では何かが崩れるような音がする


終わる こんどこそ


すべてが  ものがたりが   ぜんぶ

(111) 2024/09/28(Sat) 09:20:56

探偵殺しの泥 ガァド





  おわっ て し  まう


  なにも   かも


  ■に つたえたかった ものがたりが

  
  ようやく  みつけた


  ■■■■■・■■■■■■の 


  さいご の ■■■が

(112) 2024/09/28(Sat) 09:23:09

探偵殺しの泥 ガァド






………… 化物はその体を溶かす。


どろり 身体の形を無くしてしまうまで


増え続ける泥の肉体で 


護るべきものの上に覆いかぶさる


そうしたい そうありたいからそうするんだ

(113) 2024/09/28(Sat) 09:27:07

探偵殺しの泥 ガァド





…だって  そう
だれか に   きづいて  ほしいから


"きみ" に  であって  ほしいから


この  ものがたりを    しゅうえんを


"  きみ " の せかい に とどけたいから

(114) 2024/09/28(Sat) 09:31:56

探偵殺しの泥 ガァド







…燃え上がる 大樹の下。
爆ぜる音の向こう側。
嵐は止まぬ。嵐は荒れる。


しじまのうみを 飲み込んで。

(115) 2024/09/28(Sat) 09:34:40



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