19 【R18】アッシャー村の春の祝祭3
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菓子屋 コウセツ
[ 恋人たちに向けたカフェスペースとは別に、
村の広場には例年通り
食べ物や酒が並んだテーブルがあった。
既に楽しそうに出来上がった人たちの姿も見え、
組み木の周りでは祭りの音楽に揺られて
楽しそうに踊っている人たちの姿も見える。
その中にはもしかしたら、
入れ替わりで友人たちの姿も見れたかもしれない。
>>1:373>>1:357
踊る男女の輪の前で、繋いでいたラヴの手を軽く持ち上げる。
シルヴァンと内緒でした練習の成果>>0:415は、
うまく出せるかわからないけれど。 ]
踊ろう、ラヴ。
私達のこれからの幸福の為にも。
[ そう言って、笑って二人で踊りの輪に入ろうか。 ]
菓子屋 コウセツ
[ 練習したおかげか、
なんとか形になっているステップを踏んで。
時々バランスを崩しそうになれば、
やっぱり下手だなと笑ったりして。
今日だれよりも綺麗な君を手にしているのは私なのだと、
村中に見せつけてしまおう。
中途半端に下手くそな私の踊りは、
ロマンチックというよりは
どこか面白おかしい物になったかもしれないけれど。
花に満ちたこの村で、自分の花を見せつけるように、
君との踊りを楽しもうか。** ]
菓子屋 コウセツ
[ 考えてみれば、この祭りで誰かと踊ったことがないのは
何も私だけじゃない。
ラヴだって練習を重ねてきてはいないだろうし、
互いにぎこちない踊りになってしまったのは当然のことだろう。
優雅とは言えない。
二人して、こっちが先だっけ？と顔を見合わせながら
下手くそなステップを踏んで踊って。
それでも自然と笑みが溢れ、
気づけば笑い声すら抑えずに二人手を取り踊っていた。>>9 ]
ふ、あはは…っ！
ああ……こんなに楽しいものだったんだな…
[ 君と踊るまで知らなかった。
シルヴァンとの練習も楽しかったが、
どちらかというと互いに練習として真剣なもので
こんな風に”楽しむ”ためだけのものではなかったから。 ]
菓子屋 コウセツ
[ 君がどこか寂しそうな顔をする度。
君が折れてしまいそうになる度。
日々の暮らしの中、
何かを諦めたような言葉を言う度。
いつか君に、ひだまりの中で幸福に包まれて笑って欲しいと
私の腕で抱きしめて、涙も笑顔も全て受け止めてしまえたらと
何度も何度も願ってきたんだ。 ]
菓子屋 コウセツ
[ くるくると周る君を抱きとめて、
君の鼻についた誰かが散らせた花びらを、唇で拭う。
そのまま差し掛かった曲の切れ目に、
悪戯を仕掛けるように一度触れるだけのキスをして。
薄幕ですら隠されていない周目の中、
周囲が一瞬わぁ、と声を上げたものの。
すぐに私達を見守る目は温かなものになっただろう。 ]
……いつか式をあげる時も、
この村でこうして祝われながら
花嫁姿の君を抱き上げたいものだな。
[ 君の体を抱きしめて、幸せそうに微笑む。
今日の白いワンピースも、
ささやかな花嫁衣装のようだけれど。
本当に式をあげる時は、二人で衣装を選べたらいい。 ]
菓子屋 コウセツ
[ やがて、踊りのBGMが緩やかに止まり
それにあわせて踊りも一時休憩や
人の入れ替わりになっただろう。
またすぐに再開するものではあったが、
ただでさえ慣れない踊りをひとしきり踊った後だ。
軽くきれた息を整えるようにしながら、
輪の外に彼女を連れ出そうとするだろう。 ]
はぁ……。あれだけやれば、きっと男たちだけでなく
村中に知れ渡る事になるだろうな。
[ まだどこか可笑しそうに笑いながら。
ラヴの腰を抱いて、少しばかり休憩しようと
邪魔にならない端に寄る。
君は私の贔屓目だというけれど、
私にはとてもそうは思えなかったから
あれだけ見せつければ十分だろうと、満足げな顔をして。 ]
菓子屋 コウセツ
[ 依然賑やかに盛り上がる広場の祭りを見ながら、
私は君に口を開く。 ]
そういえば…
もし今日君に想いを伝えてその想いが叶ったなら、
君に見せたいものがあったんだ。
[ 今日という日、君に想いを伝えると決めてから準備していたのは
首飾りや踊りの練習だけではない。
けれどその全てを持ってくることはできなくて、
まだ家に眠っているのだが。 ]
この後、よかったら見てもらいたい。
祭りで気になる店があるなら寄ってからでいいんだが、
私の家に寄ってもいいだろうか。
[ そうして彼女を誘ってみよう。
彼女が行きたい場所があるのなら、
そのままそちらを優先するつもりで。** ]
菓子屋 コウセツ
[ 彼女の傷を全て埋めることはきっと難しい。
けれどその傷も見えないほどの幸せで包んで
いつまでも私の側で可愛らしい笑顔を見せていて欲しい。
どんな障害だって乗り越えられると思った矢先、
彼女に言われた覚悟の話に、
思わず吹き出して笑ってしまった。>>28 ]
あ～……。
確かに、村のおばさま方は喜んで突きにくるだろうな…。
あんな若くて可愛い子どうやって誑かしたんだ…とか、
君のことを心配していた人たちにも、
幸せにしないと怒るぞだとか色々言われそうだ。
[ 彼女が一人になってしまった時、
そんな彼女を心配していたのは、
友人である俺達だけじゃない。
彼女の店を利用する客やすれ違う村民、
皆がきっと、君の心が癒えるのを待っていたはず。 ]
菓子屋 コウセツ
[ ラヴの手を引いて向かうのは、
暁亭の工房だった。
店から連なって、レジの奥の扉を抜けると工房があり、
更にそこの階段を登ると私のプライベートな家になる。
家族は同じ村内の近場に暮らしており、
この家に住むのは私だけだった。
CLOSEの札がかかった暁亭の奥の工房に足を踏み入れると、
普段の菓子作りのための甘い香りに包まれる。
普段は私以外入れないその場所に、
彼女を手招いて入っていった。 ]
…然程面白いものではないんだがな。
その…、君に一番に見てほしいのもあって…
[ 工房内は、普段東洋の菓子を作るのに使うための
ラヴに貰った鍋だとか、蒸し器や銅板など
見慣れぬ器具が所狭しと並んでいた。 ]
菓子屋 コウセツ
[ 冷蔵庫の中から取り出した白い箱を、
ラヴの前のカウンターに取り出す。
中のものが崩れぬようにとその蓋をあけると、
そこに入っていたのは──…… ]
初めて作ったんだ。
まだ多少ぎこちないかもしれないが…
[ 普段私が作る菓子とは全く違う、
小さなホールのケーキだった。
真っ白な生クリームのケーキの上には、
黒いクリームのライン。
更にそれを飾るように、
白いレースを模したチョコレートが飾られて
黄色い琥珀糖が全体を散らすように煌めいている。 ]
菓子屋 コウセツ
黒のクリームのラインが炭を入れたほうじ茶で…
白のレースには軽くさくらで香り付けがしてある。
中に挟んだのはどちらにも会う苺で…
…君を、イメージして作ってみたんだが……。
[ 手紙とともに彼女に届けた暁亭の新作とは別の、
ただのマイナーチェンジ等ではない、
ほんとうの意味での新作。
どうだろうか、と彼女の反応を伺うように視線をやりつつ
どこか眉尻を下げて笑った。 ]
私は私の故郷だけでなく、君と出会えたこの村も好きだ。
……だからいずれは、この村の雰囲気と
私が好きなものを合わせたような…
この店にしかないものが作ってみたくてな。
[ そしてそれを一番に食べて欲しかったのは、他ならぬ君で。 ]
菓子屋 コウセツ
もしも二人で歩む未来を掴めたならば、
私がずっと君を想っていた証として…
何度も練習したコレを見て欲しいと思っていたんだ。
私はやっぱり、
君が私の菓子を食べて喜んでくれる顔が好きだから。
祭りで新作を渡せない、と言ったのは
本当の新作がコレだったから…というのもあったんだ。
しかし…これを渡すというのに、
さっき店のケーキを食べてしまったのは愚策だったな。
[ 12cmほどのそれを前に、私は何処か苦く笑った。** ]
菓子屋 コウセツ
[ 喜んでくれたらいいと思っていた。
けれど、受け取ってくれるだけでも十分だとも思っていた。
そんな私の気持ちを受け止めた彼女は、
心の底から嬉しそうに、
今私の前で笑顔を浮かべてくれている。
彼女の言葉と気持ちがじんわりと胸に染み渡り、
何よりも嬉しい褒美をもらったような心地になって。>>65 ]
…はは……。
よかった…喜んでもらえて…。
[ うまく言葉を紡げないのは私も同じ。
ふわふわと浮ついた気持ちになり、
緩む口元が抑えきれない。
大好きな子に気持ちを受け入れてくれる喜びに、
頭が甘ったるい感覚で満ちていく。 ]
菓子屋 コウセツ
[ 食べようと言ってくれる彼女に頷いて、
私はケーキ用のフォークを食器入れから取り出した。
綺麗なナイフでケーキを食べやすいサイズに切り取ると、
一切れを皿に乗せてそっとフォークで一口分を掬う。]
どうぞ。お姫様。
[ そう言うと、丁寧に乗せられたケーキを
彼女の口元に差し出してみようか。
あえてプレーンのスポンジには、
オーソドックスな苺とクリームが挟まっていて。
上に乗せられた焙じ茶とさくら味の飾りが、
ふわりと異国の香りを漂わせるだろう。 ]
菓子屋 コウセツ
[ せっかくの特製のケーキだ。
ただ並んで食べるだけで居るつもりはなくて。 ]
もしも美味しくできていたら、
姫から何か褒美を貰っても？
[ そんな風に首を傾げ、ふざけて見るけれど。
こうしてフォークを差し出すだけでなく、
更なる褒美を強請るなど…少し欲張りだろうか。** ]
菓子屋 コウセツ
[ 君のためのケーキを前に
食べた後の褒美を追加で強請ってみれば、
ラヴは聞いていない！とばかりにむくれてしまう。>>96
……こういう仕草、逐一可愛すぎるのはなんなのだろう。
彼女は自分の可愛さの自覚がないようだけれど、
彼女のこうした振る舞いに逐一ときめいてしまう私がいる。 ]
（どうせ他の人らも君の魅力に気づいているんだ。
それでももう、他の誰にも愛を囁かせはしないけど。）
[ 開かれた口に、ケーキを差し出して。
もぐもぐと味わう彼女を前に、
私はドキドキとその様子を見守っていた。>>97
何度も試作を重ねたケーキだ。
自信があるとはいえ、
やはり初めての一口には緊張してしまう。 ]
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